ぽん太広場の君へ

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 いつの間にか轟音もGも止んでいた。 「あなたはクッキーを作らせましたね?」 「その材料に砂糖を使いましたね?」 「砂糖を作る為に燃料を転用しましたね?」 「この30年でやっと立ち消えさせたものを」 「重罪です」  意味が全くわからない。 「何で?」 「この国は今、甘い物が厳重に禁止されているからです」 「まさか。あたしそんな中で生きていけない」 「メタボ対策の甘い物排除、サトウキビのバイオ燃料転用による温暖化対策。現総理の画期的な政策です」 「そんな。納得できない」 「どうしてですか。どのようにですか。他にどんな代替案があるというのですか」 「え、と、あたし理屈は苦手……弁護士呼んで。優秀な人知ってるの」 「名前は?」 「佐伯(さえき)稔。住所は」  男達は顔を見合わせた。 「彼は現在弁護士ではありません」 「そんな訳ない、さっき事務所があったもの」 「それは2024年のこと。今は2054年。佐伯稔は総理です」 「え?」 「タイムマシンの完備で我々時間警察が、それら画期的な政策を阻害する者を根絶すべく動いている」 「他にも騙し合いのない世の中を作る為、小ズルい駆引の象徴、狸狐を禁止」 「た、狸も?」  それは誠也君の話と一致する。となると、誠也君は未来人……。 「ただ今相原誠也15歳を確保しました」 「誠也君が何を」 「有名高校在学中と偽って女の子の気を引いた」 「……それだけで?」 「嘘や駆引が発覚した場合、花咲かじじい像前で毎週懺悔するのが刑の一つ。そんな中、彼は時空を超えた電話が繋がる狭間を見つけてしまった。それでもう一つ『甘い物を作る』という重罪を犯したという訳です」 「彼はどうなるの?」 「この世界からの消滅が妥当。あなたも同じ」 「消滅?」  冗談じゃない。  一人が霧吹きみたいな物を取り出し、あたしに向けた。毒殺刑? 嫌だ。何とか。何とか逃れる手は。
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