ぽん太広場の君へ

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「ま、待って。総理と話させて」 「何言ってる」 「狸の禁止は世の為じゃなく総理個人の都合だとしたら? それ確認しないとあたし成仏できない。化けて出てやるから!」  リーダーらしい警官が肩をすくめ、ハンドルを二回叩いた。フロントガラス全体が画面になる。 「どうぞ。音声がメールで総理に届きます」  あたしは大きく息を吸い込んだ。 「稔、2024年の佳奈です。総理になったんだってね。偉くなる人だと思ってたよ。なのにどうしてあたしと付き合ってくれたのかわからない。でもあたしはずっと好きだった。大好きだった。このところ言えなかったけど」  警官らが咳払いするが、この際恥とかはいい。 「何故言えなかったかっていうと、稔のせいです。ええ絶対稔が悪い。あたしは、会う必要ない日だって会いたかったの! 一緒に素敵なレストランで食事したかったの! 甘い物大好きだけど、稔に会う時はお洒落したくて痩せたかったの。お見合いって嘘ついたのは止めて欲しかったから!」 「おい。狸の話は?」 「今からよっ。稔もお見合いなんか嘘だと気付いてたでしょ? だから『すれば?』って言ったんでしょ? 狸の化かし合いみたいに。結局あたし達は破局した。それを後悔してくれたんじゃないの? 稔が狸を未来から消したのはそのせいだって……あたしはそう思いたい! だけど問題は狸じゃないよね。その解決策、おかしいよね!」  と、さざ波のような雑音が発生、どんどん大きくなり、銅鑼が続くような大音量に。 「ど、どうした?」 「何かがズレて――時空に歪みが――」  音はどんどん高くなり激しくなり、……そして急に止んだ。  やがて沈黙が、聞き慣れたカチャカチャという生活音に取って代わった。
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