あまし

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時が過ぎ、二人目の子が四才になった。 女の子で、名前は『救』と書いて『すくい』 健康で活発な子に育っている。 「おとーさん、はやく行こうよ」 「ごめん、これだけ書いておくから」 休日の朝、遊園地へ連れていく前にホームページに書き込んでいる。 真由も俺も、子を亡くした人たちに声をかける活動を続けていた。 「赤ちゃんのときにね、死んじゃう子もいるんだよ。 救は長生きしてほしいな」 まだ伝えるには難しいことかもしれない。 それなのに、救は言った。 「妹、あまし、元気でねって、言われた感じした」 キーボードを打つ手が止まった。 亡くなった子の名前は救には告げていない。 「あのね、生まれるときにね、ちっちゃい子が手を振ってくれたよ。 それからね、暗いほうに行って、明るいところに出たの」 「それ、本当に?」 「うん、それでね『あまし』って、わかったよ。 それからね『とうこ』っていう、子もいたよ」 「まさか......」 あのとき。 偶然に出会ったタクシー運転手の石井(いしい)さん。 彼の亡くした女の子には『透子(とおこ)』と、名付けようとしていたのだ。 「おとーさーん、遊園地!それとね、プリンたべたい!」 「あぁ、うん、行こう」 救の手を強く握りながらも、足元は揺らいでいた。
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