0人が本棚に入れています
本棚に追加
時が過ぎ、二人目の子が四才になった。
女の子で、名前は『救』と書いて『すくい』
健康で活発な子に育っている。
「おとーさん、はやく行こうよ」
「ごめん、これだけ書いておくから」
休日の朝、遊園地へ連れていく前にホームページに書き込んでいる。
真由も俺も、子を亡くした人たちに声をかける活動を続けていた。
「赤ちゃんのときにね、死んじゃう子もいるんだよ。
救は長生きしてほしいな」
まだ伝えるには難しいことかもしれない。
それなのに、救は言った。
「妹、あまし、元気でねって、言われた感じした」
キーボードを打つ手が止まった。
亡くなった子の名前は救には告げていない。
「あのね、生まれるときにね、ちっちゃい子が手を振ってくれたよ。
それからね、暗いほうに行って、明るいところに出たの」
「それ、本当に?」
「うん、それでね『あまし』って、わかったよ。
それからね『とうこ』っていう、子もいたよ」
「まさか......」
あのとき。
偶然に出会ったタクシー運転手の石井(いしい)さん。
彼の亡くした女の子には『透子(とおこ)』と、名付けようとしていたのだ。
「おとーさーん、遊園地!それとね、プリンたべたい!」
「あぁ、うん、行こう」
救の手を強く握りながらも、足元は揺らいでいた。
最初のコメントを投稿しよう!