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その意外な言葉に、私は失礼な手を振り払うのも失念して彼に振り向いてしまいます。
「ミス・ポーレット。貴女の任務後のお顔をご存知ですか?」
「顔?」
「ええ。貴女は任務中は慈悲深い大天使の仮面を貼り付けていますが、任務を終えると今にも叫び出しそうなお顔をしているのですよ」
続いた言葉に、私の重苦しい胸はギュギュッと締め付けられました。
そして今まさに、叫び出したい衝動に駆られました。
——こんなことしたくない、もうやめたい。誰かやめさせて!
それはいつも、私が心の内で叫んでいる言葉です。だって私がやっていることは、天使の行いなとではない。
体よく天国へ見送りなどと表現しているけれど、これは悪魔の所業です。
私がやっていることは、人の生命の火を消すことなのですから……!
「ぅ……!」
私は嗚咽が漏れかけた口を手で塞ぎ、今度こそ中尉に背を向けました。
私が取り乱せば、任務内容を否定することになります。
私の心が任務を否定しても、けっして表に出してはなりません。
しかしそのときでした。
「ミス・ポーレット」
肘を強く掴まれたかと思うと、グイッと彼に引き寄せられました。そして腕の中に閉じ込められたのです。
彼は私に驚く隙も与えずに言葉を紡ぎます。
「貴女は大天使なんかじゃない。ひとりのか弱い女性だ。この任務が貴女にどれほどの苦悩を与えていることか、立会役の私にはわかります。どうか貴女の苦しみの半分を、私に持たせてください」
彼の腕の力が強まり、鍛えられた体にしっかりと包まれました。私の顔はその胸の中に埋まっています。
失われた生と向き合った直後に感じる体温と確かな鼓動に、私は溜め込んでいた苦しみを吐き出さずにはいられませんでした。
「あああぁぁ!」
私は慟哭を彼の胸にぶつけました。彼の厚い胸はそれを少しも漏らすことなく、すべて受け止めてくれたのでした。
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