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ニセモノの首
「王様、首をはねました!」
うやうやしく王の前に差し出された女性の首。
絶命したその顔を正面から見て、王は絶句した。
「そんな馬鹿な!」
酒場で国家転覆を説く者がいる。
そんな情報を元に反逆者として浮上した身寄りのない女。
きっと隣国から忍び込んだスパイに違いない。
住所を持たず、親しくなった者の家を転々としていた。
ある夜、王の指示で襲撃され、命を絶たれた謎の女性。
その正体は、古いしきたりに支配された城から飛び出した王の娘だった。
「人違いだ」
王は絞り出すようにそう言い残し、部屋に籠った。
ニセモノの首をはねてしまった?
家来は自分も首をはねられると恐れた。
だが、何の処罰も下されなかった。
女性の亡骸は墓を建て、埋葬された。
王族の墓地から遠い、城を望む丘の上に墓標が立った。
王は信頼できる家臣を酒場に送った。
娘がどんな国を建てようと市民に説いていたのか知ろうとしたのだ。
城の窓から娘の墓がある丘を見つめる。
これからは開かれた国を目指そう。
そう心に誓った王の目に涙が溢れた。
(了)
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