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ラファエルと東京
先輩が人に頼まれてコンセプトカフェの店長になるからキャストに来て欲しい。そう誘われてその場でいいですよと返事をした。
どうやら神様はこの人と私を離さないような遊びをしているらしいってもう知っていたから。
抵抗するだけ無駄なのだ。
天使のコンセプトカフェでは、かおり先輩はウリエル、私はラファエルと名乗ることになった。
お客さんは少ないけどきっとこれから増える。増やしてみせる。
そんなこと思っていたのにもう挫けて逃げ出そうとしている。
飛行機の窓から遠ざかっていく地元と過去を眺めていた。
なんだかんだ送り出してくれた先輩の表情を思い出す。すごく心配そうな顔をしていた。
東京に着いてまず思ったのは都会の人は背が高いんだなあ、である。私はそこまで背が低いほうではないのに、周りを歩く人を見上げていた。私の地元の平均身長が低いのか、それとも都会が怖くて街ゆく人が怖くて大きく見えていたのか分からない。
今思い返すと自分って小さな存在だったんだなって気づいた瞬間だったのかもしれない。
人が多いから人の感情も多くて、好きや嫌いがたくさん存在してるんだなって思った。だからその分、一人一人のそういう気持ちがあって当然って思われてて濃度が低くなっている感じがした。
ここはきっと忙しいから人の感情の入れ替わる速度もこんなに早いんだなって思った。
自由で生きやすくて、でも寂しかった。
人にはそれぞれ生きるのに丁度いいリズムがある。
小学生の頃好きな速さで机を叩いてみてと先生が言って、クラスの皆が机をたたき出す。
すごく早い子もいれば時計の速さと同じ子もいて。私はその中で1番と言っていいくらい遅かった。
東京が合ってない。体験入店3日目で言われた。
「自分で分かってるよね?」
接客の邪魔。そんなふうに周りから見られていた。都会のコンカフェの女の子たちは私よりずっと容量が良くて仕事が早い。私からしたら大きなお客さんとのトラブルもよくあることと流している。小学生の頃に言われたそれを思い出して流れるリズムの速さが違うってこういうことなのかなと思った。生きる上で行動の選択の速さが違う気がした。
想像していた仕事が出来ない私への裏での陰口も実際は全くなくてそもそもどうせすぐ居なくなるって思われているのがわかった。
感情も行動も人が多いからこうしたらこうみたいなパターンが決まってて、一人一人の考えもがなんだかテンプレートがあるみたいだった。
田舎の同調圧力もつらいけど、ここのテンプレート通りの会話も辛かった。
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