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「幸次君?」
アイリーンの言葉で考え事を
していたのを打ち切られた
「ねぇお仕事を辞めて
私達とずっと一緒にいてくれる?」
「もちろんさ!そのつもりだよ!」
「じゃあ沙羅と結婚してね!」
「沙羅がいいって言ってくれたらね」
「ちょっと待って!聞いてくるから」
「え?あ・・・おい・・ちょっと!」
スマホがゴトンとテーブルに置かれる音と共に
受話器の向こうはシンとなった
きっとアイリーンが風呂場に行ったのだ
そこには裸の沙羅が・・・・
途端に幸次の心臓は激しく脈打ちだした
アイリーンが電話口に出るのを待って緊張が走った
「もしもーし!」
「アイリーン!沙羅は何て?」
幸次は大声で聞き返し
幹線道路を右に曲がる道を間違えそうになった
「(どうせからかっているんでしょ)
だって!! 」
「とんでもない!いたって真剣だよ!」
この自分の夢が期待外れになる
可能性が出てきたので幸次は焦った
額には玉の汗が出て来ていた
「男女が結婚するにはお互いが愛し合わなければ
ならないんだって!
ねぇ、幸次君は沙羅を愛している? 」
とてつもなく真剣な声で幸次は言った
「愛しているよ・・・心から」
「ふーん…わかった!ちょっとまっててね!」
自分は何をやってるんだ、幸次は頭をガシガシ搔いた
再びスマホがテーブルに乱暴に置かれて
幸次は待ちぼうけをくらった
今度はそんなに待たずにアイリーンの声が聞こえた
「プロポーズの言葉は?
指輪に花束も必要らしいわよ?」
「それなら大丈夫だよ!」
幸次は車を停め、ダッシュボードから手のひらサイズの小さな箱を取り出した
そして運転席から降りてトランクを開け
目も覚めるような巨大なバラの花束を取り出した
「ねぇ君の家の今夜の晩ご飯のメニューは何?
僕今腹ペコなんだ 」
「カニ鍋よ!」
片手にスマホ・・・
片手にバラの花束を抱えて軽やかに歩き出した
そしてポケットには彼女に贈る指輪が入っている
やっぱりチョコレートも用意すればよかった
きっとこれから自分達は幸せになれる
幸次はそう確信してアイリーンに言った
「沙羅の作ったカニ鍋は絶品だ!大好物だよ
僕の分のお皿も並べておいてくれ
あと1分でそっちに着くから 」
「わかったー♪」
*゚..:。:.
そこからきっちり1分後に
沙羅の家のインターホンが鳴った
:*゚..:。:. .:*゚:.。:
:*゚..:。:. .:*゚:.。:
:*゚..:。:.
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【完】
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