この手を離さないで~天使が紡ぐ赤い糸~

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隆が帰った後店内の大きな時計を見ると 午後6時を回ったばかりなのに あたりはまるで深夜のように真っ暗だった 外は大きな風の音と共に吹雪が舞っている 沙羅の住む西日本海のこんな小さな田舎町では コンビニといえど24時間営業などしていると 深夜は誰も来ないので営業をするだけ赤字だ なので通常営業は10時までにしているが 大晦日で豪雪吹雪の今夜は 沙羅は最後の従業員を送り出して 店を閉める準備を始めた コーヒーマシーンを洗浄し3日からの 新年営業のため店終いの準備をする 今夜は店を閉めたら車で10分でたどり着ける 高校時代の親友の尚子の家でカウントダウン鍋 パーティーをする予定だ 沙羅は特に行きたいわけでもないが 尚子の親戚一同がここのコンビニをよく 使ってくれているので 身内の集まりだからと顔を出す様に言われて 約束させられてしまった 特に尚子がずっとしつこく言っている 尚子の自慢の親戚の独身男性が集まるらしく 中でも警察官のいとこの彼をどうしても沙羅に 紹介したいと言い張っている 沙羅はため息をつきながら 先日尚子が店に来てコーヒー片手に 沙羅に言った内容を思い出していた 「ねぇ!沙羅! しばらく男性と付き合わないと決めたからといって 婚約解消以来 人付き合いまで嫌いになって気難しくなったと みんなに思われたくないでしょう? 大晦日に家で一人でいるなんていけないわ」 尚子にこう言われた時 たしかにもっともかもしれないと沙羅は思った しかし尚子の家族や近所の人は人一倍おせっかいで 小さな村の若者同士をくっつけるのを 生きがいにしている あれやこれやと見合いの世話をやきたがるのには さすがの沙羅も少しうんざりさせられる あの時以来・・・・ 沙羅は男性と恋愛をするのが怖くなってしまっていた 沙羅は高校の同級生の 隣町の小学校の先生の彼と婚約までしていたのに 彼は沙羅に内緒で浮気をしていた 自分より七歳も年下の女性と・・・・ そしてその彼女が妊娠したからといって 彼は3年付き合っていた沙羅を捨てて あっさり婚約を解消してその女性と結婚 してしまったのだ
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