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そして再びシンとした車内からエンジンを
かけようとした瞬間
どこからか子供の泣き声が聞こえたような気がした
とはいえ風の音も相まって気のせいかともう一度
エンジンをかけようとした
またしても泣き声が聞こえた
今度はハッキリと大声で叫んでいる
そして今もだ!
沙羅は吹雪の中車から降りて耳を澄ませた
間違いない
あれはたしかに人間の声だ
こんな吹雪の中に子供がどこかにいるの?
誰の子だろう?
いったいどこにいるの?
子供の泣き声は店の
横手の倉庫のあたりから聞こえてくる
沙羅は素早く向きを変えてその方向に歩き出した
すると半開きの掃除道具入れの倉庫の中に
うずくまってる小さな人影が見えた
沙羅はスマートフォンの灯りを灯して
倉庫の中を良く見ようとした
うずくまっているのは小さな少女だった
おそらく4~5歳ぐらいだろう
泣きじゃくりながら誰かの名前を呼んでいるが
ハッキリとは聞き取れない
そしてなんと素足にピンクの薄汚れたクロックス
薄手のジャージ素材の服に
下も同じぐらい薄手のジーンズだった
アウターも着ずこの激しい雪から少女を
何一つ守ってくれてはいない
あと数分もこのままいれば
少女は間違いなく凍死するだろう
沙羅は迷わず倉庫を開けて
少女の前に膝間づいた
「ねぇ?どうしたの?
お母さんとお父さんは?どこにいるの?」
「いやっ~~~~ 」
少女は沙羅を見て余計に泣き叫んだ
そしてスンガンがどうとかこうとか言っている
日本人ではないわ!この子!
混乱して怯えている女の子を
沙羅がぎゅっと抱きしめた
「家族とはぐれたの?
それとも自分でここまで来たの?
私は沙羅よ!
ねぇここは寒いわ!私の家に来ない?」
吹雪にかき消されないように大声で叫ぶ
「私の家にきたら
そのスンガンとやらを探してあげるわ!
すぐそこよ!私の家!」
「いや!スンガンはいや!
お願い私がここにいることスンガンには言わないで!」
日本語がしゃべれるのね!
女の子の必死の訴えにみなぎる
恐怖心に沙羅は危険な事件の気配を感じた
着のみ着のまま泣きじゃくって凍えている
少女を抱きしめる
この子はどこからか逃げてきたんだわ!
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