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「とにかく私の家に行きましょう!
このままでは二人とも凍死してしまうわ
抱っこしてあげる!
いい? 」
女の子は沙羅が抱き上げると
ぎゅっと沙羅の首にしがみついた
その些細な行為が沙羅の心を締め付けた
降りしきる雪の中すぐ店の裏にある
自分の家に向かって沙羅は走り出した
今にも凶悪犯が二人を追いかけてくるように
一刻も早く安全な場所へ行こうと焦っていたので
沙羅は何度も行き来している道なのに
転びそうになった
沙羅が抱いているこわばった体はとても軽く
すっかり冷え切って絶え間なく震えている
「だいじょうぶよ いい子ね」
沙羅は震えている少女に何度も
励ましの言葉をささやきかけた
いったい何故こんな無垢な小さな子供が吹雪の中
裸足同然で逃げ出す状況に追い込まれたのか
あれこれ理由を考えてみたが
どれもいいものではない
「さぁ!着いたわよ!
ここは私の家よ!ここなら安全よ」
沙羅はキーを取り出して玄関を開け
長ぐつの踵で勢いよく閉めた
少女の濡れたクロックスを脱がせて
抱き上げたままリビングの
フロアソファーに座らせた
その頃には少女のヒステリックな泣き声は
小さなすすり泣きに変わっていた
「さぁコタツに足をいれてね 」
コタツ布団をめくり
小さな足を入れてあげる
「床暖房とファンヒーターをつけたから
すぐに家中あたたかくなるわよ」
はぁ~・・・・
「あったか・・・い・・・ 」
少女は感動したように
コタツに足を入れたまま動けなくなっていた
・・・・コタツを知らないなんて
やはりこの子はこの辺の子じゃないんだわ・・・
ファンヒーターの熱風が瞬く間に
リビングを温かく包む
床暖房も効いてきて
もうどこを歩いていていても
寒い所などなくなった
沙羅は毛布を持ってきて
コタツにうずくまっている少女の
冷え切った体を包んでやった
明るい所でマジマジと少女の顔を見る
・・・・尚子の上の子が5歳だから
それぐらいかしら?・・・
肌は浅黒く
髪は漆黒の黒・・・
そして沢山涙の後がついた瞳は一重で
吊り上がり気味だけど・・・
とっても可愛らしい顔をしている
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