この手を離さないで~天使が紡ぐ赤い糸~

9/43
前へ
/43ページ
次へ
次にもう一件スマートフォンを握りしめて 友人の尚子の電話番号を押した 「もう!沙羅なの? 約束の時間をとっくに過ぎてるわ 雪でこっちに来られないなら うちの親戚を迎えに行かすから――」 「残念だけど行けなくなったわ 緊急事態発生なの! 」 沙羅の真剣な声にすぐに何か あったのだと尚子も察した 「――詳しく話して!」 高校時代からの友人は沙羅が 婚約破棄した時も両親の交通事故後の お葬式もいつも沙羅に寄り添ってくれた それゆえの二人の関係だからこそ 沙羅が真剣な声を出したときは 尚子はすべて受け止める覚悟が出来ている 沙羅は店を出て尚子の家に向おうとした時から ありのまますべてを尚子に話して聞かせた 「スンガンが誰か知らないけど・・・・ 」 沙羅はスマートフォンをぎゅっと握りしめた 「そいつにアイリーンを渡す訳にはいかないわ 取り返しのつかないことが起こるかもしれないんですもの」 「同感よ!」 尚子も声を震わせた 「本当に可哀そうな子! 命からがら逃げてきたのかもしれないわ わかるでしょう?うちにも同じ年の子がいるのよ そんな子がこんな吹雪の中 裸足でなんて・・・・しかもそいつに暴力をふるわれているなんて・・・」 「考えただけで痛ましくなるわ」 沙羅は答えた 「アイリーンがあなたの店までたどり着けて ラッキーだったわ、そしてあなたもあの子の声を聴きつけられて本当によかった・・・・ でも・・・・沙羅大丈夫? まだそのスンガンとやらがそこら辺を うろついているかもしれないわ・・・ ねぇ!その家に二人でいるのは危険よ うちにその子も連れていらっしゃいな! 子供達と一緒に寝かせてやればいいわ」 尚子の温かい言葉に沙羅は微笑んだ 私の親友はとても優しい 「そうしたいのは山々だけど・・・ 幹線道路が閉鎖されているのよ うちのレンジローパーじゃ小道は通れないわ あなたの家には行けないの、大丈夫よ!戸締りをしっかりするから私の家は安全よ」 「うちの軽トラなら小道を通れるわよ、後で旦那と一緒にあなたの家に行くわ、何か手伝えることがあるかもしれないし その子・・・ 日本語じゃない言葉もしゃべるって言ったわよね ねぇ・・・ヤマザキ養鶏場に来ている 集団出稼ぎの外国人達の子供かしら?」 沙羅は思いを巡らせた 「あそこの彼らはたしかベトナム人で お給料日にはうちのコンビニをよく 使ってくれるけど、たしかみんな若くて独身男性ばかりだったはず・・・・ 家族連れは見たことないわ 」 尚子は笑って言った
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

652人が本棚に入れています
本棚に追加