652人が本棚に入れています
本棚に追加
次にもう一件スマートフォンを握りしめて
友人の尚子の電話番号を押した
「もう!沙羅なの?
約束の時間をとっくに過ぎてるわ
雪でこっちに来られないなら
うちの親戚を迎えに行かすから――」
「残念だけど行けなくなったわ
緊急事態発生なの! 」
沙羅の真剣な声にすぐに何か
あったのだと尚子も察した
「――詳しく話して!」
高校時代からの友人は沙羅が
婚約破棄した時も両親の交通事故後の
お葬式もいつも沙羅に寄り添ってくれた
それゆえの二人の関係だからこそ
沙羅が真剣な声を出したときは
尚子はすべて受け止める覚悟が出来ている
沙羅は店を出て尚子の家に向おうとした時から
ありのまますべてを尚子に話して聞かせた
「スンガンが誰か知らないけど・・・・ 」
沙羅はスマートフォンをぎゅっと握りしめた
「そいつにアイリーンを渡す訳にはいかないわ
取り返しのつかないことが起こるかもしれないんですもの」
「同感よ!」
尚子も声を震わせた
「本当に可哀そうな子!
命からがら逃げてきたのかもしれないわ
わかるでしょう?うちにも同じ年の子がいるのよ
そんな子がこんな吹雪の中
裸足でなんて・・・・しかもそいつに暴力をふるわれているなんて・・・」
「考えただけで痛ましくなるわ」
沙羅は答えた
「アイリーンがあなたの店までたどり着けて
ラッキーだったわ、そしてあなたもあの子の声を聴きつけられて本当によかった・・・・
でも・・・・沙羅大丈夫?
まだそのスンガンとやらがそこら辺を
うろついているかもしれないわ・・・
ねぇ!その家に二人でいるのは危険よ
うちにその子も連れていらっしゃいな!
子供達と一緒に寝かせてやればいいわ」
尚子の温かい言葉に沙羅は微笑んだ
私の親友はとても優しい
「そうしたいのは山々だけど・・・
幹線道路が閉鎖されているのよ
うちのレンジローパーじゃ小道は通れないわ
あなたの家には行けないの、大丈夫よ!戸締りをしっかりするから私の家は安全よ」
「うちの軽トラなら小道を通れるわよ、後で旦那と一緒にあなたの家に行くわ、何か手伝えることがあるかもしれないし
その子・・・
日本語じゃない言葉もしゃべるって言ったわよね
ねぇ・・・ヤマザキ養鶏場に来ている
集団出稼ぎの外国人達の子供かしら?」
沙羅は思いを巡らせた
「あそこの彼らはたしかベトナム人で
お給料日にはうちのコンビニをよく
使ってくれるけど、たしかみんな若くて独身男性ばかりだったはず・・・・
家族連れは見たことないわ 」
尚子は笑って言った
最初のコメントを投稿しよう!