☾1

1/10
前へ
/30ページ
次へ

☾1

『_あんたなんか産まなきゃ良かったわ』  なんて、実の母に言われた時俺はあまり悲しさを感じなかった。  この世には2つの人種が共存している。それは俺達人間と本やドラマなどの世界では恐れられている吸血鬼の2つである。  だが、吸血鬼と言っても血を求め無闇に人を襲ったりはしない。  この世界の吸血鬼は“ブラッティ”と呼ばれており、不老ではあるが不死ではなく、日光にも強い。人間とは違う事と言えば、血液を飲まなければ死んでしまう事や全く老けない事だろう。  そんなブラッティに血を分け与えるのはランク付けされた人間の“バルレ”という存在だ。普通の人間にはランクは付かないが、バルレにはC~Sのランクが付けられる。AやSの血液は高価で売買される為、金に困っている人間達は自身や家族がランク付けされる事を願っている。  母親もそういう類だった。男に捨てられ水商売で細々と暮らす生活から抜け出したかった母親は、俺の血液に期待をしていた。だがランク付けされたと思えば、ブラッティにとって余り好まれないCランク。血液を売る事も出来ず、中学を卒業してからバイトを掛け持ちさせた。  別に高校に通いたかった訳でも無いし、ここまで育ててくれた以上恩返しをしたかったので別に構わなかった。普通に考えればそんな母親なんて放っておいて逃げ出せば良かったのだろうが、俺にはそれが出来なかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加