第2話 助手席のアン

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     もともと僕は、平日の夕方一時間か二時間くらい、適当に車を走らせることがあった。特に、免許を取ったばかりの頃だ。  目的もなく隣街まで行ってみるとか、あるいは、近隣の川や池を見に行くとか。  カーナビを使わず地図だけで知らない土地をドライブするのは、まるでRPGのダンジョン探索のようなワクワク感があったのだ。それこそダンジョン内で迷子になるのと同じように、道を間違えて最初の目的地に辿り着かない場合もあったが、それはそれで一人ドライブの楽しみだと思っていた。 「そんな感じで、州境(しゅうざかい)の川まで行こうとして、行きそびれてたからさ。いつか行ってみようと思ってたんだ。水辺の景色、いい気分転換になると思うんだけど……。どうだろう?」  今になって考えてみると、これはアンのリフレッシュというより、ただ僕の一人遊びに彼女を付き合わせるだけだった気もする。それでも、 「州境(しゅうざかい)の川か……。うん、面白そうだね」  とアンは受け入れてくれて……。  その日の仕事が終わってから、僕たちは二人で、ちょっとしたドライブへ出かけたのだった。    
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