1人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話 トリック・オア・トリート(前編)
「ハ……。ハッピー・ハロウィン……」
小さな子供だから、人見知りするのだろう。魔女姿の金髪幼女は、たどたどしい口調だった。
後ろには、優しい笑顔で見守るお母さん。僕はその表情を真似ながら、
「はい、ハッピー・ハロウィン!」
と返して、用意していたキャンディーをプレゼント。
それだけで、幼女の顔がパッと明るくなる。
「わーい!」
くるりと背を向けると、幼女は母親に手を引かれて、嬉しそうに帰っていった。
「まずは一人……」
そう思いながら、僕はアパートの扉を閉める。
今年も、夜のハロウィン・イベントが始まったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!