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プロローグ
ざわざわと大勢の人の声が飛び交う。今日は中学校の入学式、式を終えた私は人の波に沿って教室へ移動するところだった。
体育館から教室へ向かう途中の渡り廊下で、校庭の周りに植えられた桜が満開なことに気がついた。綺麗だなぁと見ていたら、前を歩いていた2人の女の子が、ヒソヒソとこっちを見て話し合っていることに気がついた。
「ねえ、あれ永遠じゃない?」
「げっ、最悪。なんでこの学校にいんの。私立行けばよかったじゃん。ヤクザの娘なんて関わりたくないんだけど」
聞こえてしまった陰口。彼女たちは小学校が一緒だった子たちだ。その時から避けられたのは知ってたけど、口に出して言われるのは嫌な気分になる。
だけどしょうがない、本当のことなんだから。私の父親はヤクザだ。それも日本一の組織の組長をしている。
避けられるのは当たり前、気にしないこと。と自分に言い聞かせて教室に入った。
今日はお母さんもお父さんも入学式には来ていない。その代わり護衛の人がひっそりとカメラを回している。と言っても、その強面な顔面じゃカタギじゃないってバレバレなんだけど。
結局同級生や保護者から白い目で見られながら、入学式後のHRを終えてその日は解散になった。
「あれ〜、荒瀬のお嬢はひとりぼっちかよ」
ひとりで教室を出たら、ふとこっちに向けられたトゲのある言葉。
「……刹那」
ムッとして振り返ると、そこに居たのは双子の弟の刹那。そう、実は私は二卵生双生児。双子だけど顔は似てないし性格も真反対。本当に姉弟?って言われるくらい全然違う。
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