第7回転生「ハーレム王」

1/1
前へ
/14ページ
次へ

第7回転生「ハーレム王」

「もっとーあんな恋がしたくて こんなはずじゃなくてウブだねー♪」 「おや、美月さん。 何かいいことでもありましたか?」 「ううん。特に。歌いたい気分だっただけよ」 「そうですか。ではカラオケでもしますか?」 「えっできんの?」 山吹が手を2回ほど叩くと部屋の内装が変わり 天井にはミラーボール、正面には大画面、テーブルにはデンモクが設置された。 「すごっ!! 山吹もしかして魔法使い?!」 「ふむ、似たようなものではありますね」 山吹は一体何者なのであろうか。 「人生そんな悪くないよね あーなたとどこかで愛し合えるよーかんー」 山吹が5回目の歌唱を終えると、 異世界転生の時間になってしまった。 「美月さん、そろそろ……」 「あーもう!わかってるわよ! 異世界転生の時間でしょ!? どうせまたファンタジーハラスメント かますんでしょ!」 「いやかましては……」 「ふぅ、落ち着け美月。あと少しの辛抱なんだから。 あ、ポテチ食べたいから買ってきといてね」 「かしこまりました。 それでは良き人生を……」 白い扉がガチャっと開く。 「美月さん、おかえりなさい。 ポテチ買ってきてますよ。 賞味期限が不安ではありますが……」 「この世界って賞味期限あったんだ……ていうか」 美月はにっこり笑って山吹の頰に人差し指を突き刺した。 「ねえ? 女ですらなくなってたんですけど? ハーレム王になってんですけど、どういうこと?」 「いたたた。まあまあポテチでも食べて落ち着いてください。」 山吹はポテトチップスを開封し 静かに怒る美月に捧げた。 美月は仕方なくポテトチップスに手を伸ばし 山吹をぎろりと睨んだ。 「そうやっていつもわたしを手懐けようとして……。 まあいいわ」 わたしが転生したのはフロンリアという世界。 魔法が存在する世界だけど魔物や 多種族は存在しない世界だったわ。 わたしは公爵家のとして生を受けた。 次男。 どういう字を書くか知ってる?次の男。そう男よ。 わたしは男に生まれてしまったのよ!!!! アイスブルーの瞳にグレーの髪。 どこかクールな雰囲気の男子だったわ。 頭も良くて10歳にして領地経営の補佐も任されていた。わたしは美しさを磨き上げるが如く成長し、 18歳になった頃、縁談が山ほど来た。 自国の姫から縁談が来た時は震え上がったわ。 そんな時、わたしは幼馴染の侯爵令嬢マーガレットに 告白される。 「幼い頃からあなたのことが好きでした」 その真剣な眼差しにどきっとしたのを覚えてる。 わたし元は女なのに!! しかし色恋に疎いわたしは 自分のマーガレットへの想いが恋愛感情なのか、 友情なのか分からなかった。 メイドのサマンサに悩みを打ち明けると 突然ベッドに押し倒され、キスをされるの。 「わたしだってあなたのこと好きなのに」 キューンッ! それからわたしはさらに悩むようになるの。 マーガレットを取るべきか、サマンサを取るべきか。 貴族令息であるからには結婚からは逃れられない。 サマンサはメイドではあるものの、伯爵令嬢なので 釣り合いは取れている。 頭を悩ませる日々が続いたわ。 そんなある日わたしは妙案を思いつく。 それなら2人とも妻にすればいいのでは?と。 今なら何言ってんだコイツって思うけどね。 この国は一夫多妻制も認めているから倫理観を無視すれば可能なことだった。 そして、わたしは同じようなことを繰り返し 順調に婚約者を増やしていった。 ハーレム漫画の主人公かと思ったわ、 自分のことだけど。 しかし、自分の想い人を奪われた貴族令息が わたしに火の魔法を撃ってきたの。 わたしは焼け死んでしまった……。 ねえ、いつまでわたしが死ぬ展開続くの? もうバッドエンドやめない? 「なるほど。楽しまれたようで何よりです」 「楽しんだって……うーん、まあ……うーん」 「あ、『愛と復讐の女』最終回録画してますが観ますか?」 「見るっ!!」 ドラマのエンドロールが流れる中 日本語吹き替えのナレーションが流れる。 『こうして、わたしは幸せを手に入れた。 夫の生首という名の幸せを』end 「怖」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加