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「結婚おめでとう!!」
友人達のライスシャワーが
幸花と新郎に降りかかった。
「ありがとう」
花嫁衣装の白いドレスを着て化粧をした
幸花は幸せそうに笑う。
新郎と笑い合い、バージンロードを進む。
今日は幸花の結婚式である。
大学時代から付き合っていた海都と
この度めでたくゴールインすることとなった。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「「はい」」
わたしは今人生で1番幸せな女の子だ。
幸せな気持ちで海都と近いのキスをすると
祝福の拍手が会場に響いた。
その2年後、幸花は女の子を出産した。
人との出会いを大切にしてほしいという願いから
ゆかりと名付けた。
「この子を大事に育てようね」
生まれたばかりの我が子を抱きしめ海都を
見つめると彼は幸せそうに笑い「ああ」と
頷いた。
ゆかりは名前の通り人との繋がりを大事にする
明るくて優しい子に育った。
時には喧嘩することもあったが
その度にゆかりは反省し、立派な大人へと
成長を遂げていった。
ゆかりが歳を重ねると幸花も年を取る。
ゆかりが結婚し、孫の陽毬が生まれたとき
幸花は56歳だった。
「もう56歳だものね。
孫が生まれてもいい年齢だわ」
「あのゆかりが結婚して、
孫を見れるなんて感慨深いよ」
2人は穏やかに笑い合う。
「わたしね、子供の頃から何かが足りないって
思ってたの」
「何かって何だ?」
「それがわからないの。
だけど、その『何か』のことを思うと
ぽかぽかした気持ちになるの」
「もしかしたらゆかりとか陽毬のことかもしれないな
孫を見てると俺も温かい気持ちになる」
「確かにそうね。そうかもしれないわ」
二人は父親と遊んでいる孫に微笑ましい視線を
向けた。
「おばあちゃん!」
高校生になった陽毬が老女を覗き込んでいる。
白いベッドに横たわるのは、幸花だ。
骨と皮だけあるように見えるほど痩せている
今まさに幸花は臨終の時を迎えようとしていた。
「幸せな人生だった」
「おばあちゃん、そんなこと言わないで!」
「ふふ。年寄りは老いて死ぬものよ。
あなたがわたしのことを覚えていてくれたら
わたしはいつまでも生きていられるの」
娘夫妻が涙を流しているのが分かった。
幸花はゆかり達ににっこり微笑む。
「おやすみなさい」
そう言って静かに目を閉じた。
そうだ……。
今までずっと忘れていたわ。
わたしが何か足りないと思っていたもの。
涙が一筋頬を伝ったのを最後に
幸花は息を引き取った。
これは、美月のハッピーエンドな物語の記憶。
いつか、あの人に会うことができたら
これまでの幸せな人生について
たくさん話さないとね。
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