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異世界転生モニター
目を開けると白い空間が広がっていた。
ここはどこ?
脳裏に両親の悲痛な表情が浮かんだ。
まさか、わたしは死んだの?
いや、確かにわたしは心臓病を患っていた。
けど死ぬなんて信じられない。
信じたくない。
でも、事実ならどうすればいい?
視界がぼやけて涙が溢れた。
でも、泣いていたって仕方ない。
わたしが死んだということは
紛れもない事実なのだから。
死の間際の感覚が消えていくのを覚えている。
それが何よりの証拠だろう。
美月は小さくため息をつく。
これから自分はどうなるのだろうか。
天国と地獄に分類されるのであれば
わたしは天国に行けるのだろうか……。
恐る恐る上半身を起こし、辺りを見回す。
そのとき黒い人影のようなものが見え、少女は視線を人影に移した。
「おめでとうございます!!高崎美月さん、あなたは異世界転生モニターに選ばれました!!」
クラッカーを鳴らしてにっこり微笑む黒スーツに
七三分けの男。
「……は??」
意味がわからない。
この白い空間も、目の前の男も。
「あっ、そうでしたね、まずは説明をしませんと。わたくし、故人に異世界転生のご案内をする案内人の山吹と申します。」
男は笑顔のままお辞儀をする。
「は? 異世界転生??
……あんた何言ってんの??」
もしや不審者ではなかろうか。
「皆さん美月さんと同じような反応をされます」
慣れたように頷き山吹は軽く手を叩いた。同時に美月の目の前に『異世界転生のご案内』という
画像が映し出された。
まるで、これからプレゼンを始めるかのようだ。
口を挟む暇もなく山吹は話し始める。
「まずですね、高崎美月さん。
あなたは病気によって命を落としました」
スライドが切り替わり、
病気の詳細が事細かく記載された文章が
映し出される。
それを見て胸がキュッと締めつけられた。
お母さん、お父さん。
元気にしてるかな。
「普通、故人の魂は天国か地獄に送られ、
天国行きの方は同じ世界で
輪廻転生を繰り返されます。
ですが、あなたは特別です。
異世界転生モニターの抽選に当選し、
あなたは異世界転生の権利を得ることができたのです!」
「いや、異世界転生モニターなんて
応募した覚えはないけど!??」
「まあいいじゃないですか。
異世界転生できるのですから。
漫画やラノベでテンプレの異世界転生。
誰もが夢見る話です」
頭がくらっとするかのような錯覚を覚える。
わたしが異世界転生モニターに選ばれた!?
死んだら病気も気にせずゆっくりできると思ってたのに仕事させられんの!?
「あの、辞退します」
「辞退はできませんよ。これは神様があなたに与えた役目ですからね」
またもくらっとなる。つまりわたしに拒否権はないということだ。
「……パワハラだ……」
「ん? 何か言いましたか?」
「いや……」
山吹は黒い分厚い本をペラペラ
めくりあるページに目を通した。
「そうですねぇ
あなたはファンタジー世界に
転生してもらいましょうか。
では手続きに参りましょう」
山吹の笑顔に美月は唇の端を引き攣らせた。
「それでは、美月さん。良い人生を」
手続きが終わり、いよいよ異世界転生の時間となった。モニターとはいえ、これから始まるのが新しい人生なのだと思うと高揚感が抑えられない。
「い、行ってきます」
美月は白い扉を開け、光の中に足を踏み入れた。
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