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第1回転生「悪役令嬢」
「ふむ、美月さんは
そろそろ帰ってくる頃でしょうかね」
山吹は読んでいた小説から顔を上げる。
間違いがなければ美月が転生してから19年経っているはずだ。
ガチャッと扉の開いた音に振り返ると
俯いた美月が立っていた。
「おかえりなさい、美月さん。
この世界はどうでしたか?」
美月はにっこり笑い山吹の襟元を掴む。
「ねえ、どういうこと?
転生先が婚約破棄された挙句魔法で殺される
悪役令嬢だったんですけど??」
「ええ、確かにそうなっていますね」
「なんで殺される悪役令嬢?!
どうせならハッピーエンドな設定が
良かったんですけど!?
あんた知ってるよね?
わたし病気で死んでるって!」
ブンブン振り回されるが山吹は笑顔を崩さず
「幸せになる人物……例えば聖女やヒロインなどは
当選確率が低いんですよね……。
ですから、しばらくは不幸系が続くかと」
「残酷な運命だ」
美月は壁に寄りかかり死んだ目になる。いや、もう死んでいるのだが。
「では詳しくお話を聞かせてもらいましょうか」
美月は深くため息をつくと
転生先の世界について話し始めた。
▲▲▲
わたしが転生したのは『アルビファナ』という世界。
魔法が存在し、精霊やドラゴンなんかもいた。
わたしは由緒正しい伯爵家の長女アデリーナ・ノエル
として生を受けたの。
自分で言うのもアレなんだけど
綺麗なプラチナブロンドの巻き髪に、
透き通る海のような青い瞳の美少女だった。
「アデリーナ・ノエル伯爵令嬢!!
君との婚約を破棄する!!」
わたしは夜会で
自国の王太子レオナルドに婚約破棄を言い渡された。
何故なら、わたしはワガママ放題の令嬢で
レオナルドのお気に入りの子爵令嬢レベッカを
いじめていたから。
可哀想にレベッカは涙を流して震えていたわ。
前世を思い出せたら
いじめなんてしなかったのに……。
紅茶に毒を混入させて
毒殺までしようとしていた過去が判明し、
アデリーナは捕らえられ、死刑を言い渡される。
ここから出して!!と何度も訴えるも
流石はワガママ令嬢。相手にもされない。
ねえ酷くない?
なんでバッドエンドなんだよ。
しかも、死刑のやり方がすごい嫌だった。
なんか、体中の魔力を一気に吸い取られて
息も絶え絶えになったところで斬首。
ねえ酷くない?
マジで最悪な異世界転生でしたね。ええ。
「なるほど、貴重なご意見をありがとうございます」
表情を崩さない山吹にイラッとくる。
「もうファンタジー世界はこりごりだからね。
魔力吸い取られて死ぬとかマジ勘弁」
美月はテーブルに腰掛け山吹が用意した
オレンジジュースを飲む。
「ふふふ、今度は大丈夫ですから
安心してください」
「ホントに?」
疑心暗鬼で山吹をジトっと睨む。相変わらず心の内が読めない男だ。
「ええ。あ、もうすぐ韓国ドラマが始まりますね」
どこから持ってきたのかいつの間にかテレビがある。
山吹がリモコンをテレビに向けると『愛と復讐の女』
とタイトルが映し出された。
美月はゴリゴリの復讐劇にドン引きしつつも
そのドラマにのめり込んでいった。
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