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第4回転生「創造神」
「ポチもだいぶ大きくなってきたわね」
双葉だったポチはすくすくと育ち今や
美月の膝くらいまで成長していた。
「そうですね。このまま大きくなったら人々が生まれるかもしれませんね」
「何それ怖い」
「おっと、異世界転生の時間です」
「わたしはこのループから
抜け出せないのだろうか……」
「そんなことはありませんよ。
10回転生を繰り返し、モニターとしての役目を
果たせば自分の望む世界に転生できます」
「!?
それ最初に言って欲しかったんだけど?!」
美月はこれでもかと目を見開いた。
「すみません。ついうっかり」
「ついうっかりじゃないっ!!」
美月は叫んでから
はぁっ……とため息をついた。
コイツには何を言っても無駄だ。
「で、次の異世界は?」
「おぉ、美月さんラッキーですよ。
これはまたとない機会です。」
黒本を見ながら明るい声になる山吹に美月は期待を膨らませる。
「ま、まさか、ハッピーエンドな世界とか??」
「それは行ってからのお楽しみです」
パタンと黒本を閉じ、
デフォルトの笑顔を向ける山吹。
美月はいつもよりワクワクしながら
白い扉の前に立った。
「楽しみ〜っ!それじゃ、行ってくるね!」
「良き人生……いえ神生を」
美月が転生してから10000年ほど経った。
山吹はソファに寝転がりながら軽くため息をつく。
「やはりあの人がいないとつまらないですね。
こんな白い空間に1人きりでは……」
「ただいまっ」
「おや美月さん、おかえりなさい」
山吹はソファから起き上がり笑みを向けた。
美月はなんとも言えない微妙な表情をしている。
「どうでしたか?」
「うーん、なんていうか……。
創造神に転生したんだけど、神様達の間で
戦争が勃発してその流れ弾が当たって死んじゃったんだけどまあ楽しくないわけではなかった神生でした」
「ほう。では詳しくお聞かせ願えますか?」
▲▲▲
わたしは黒い闇の中に漂っていたの。
何百年とたゆたっているうちにわたしの中に
意識が芽生えて、身体ができた。
光り輝く金髪を腰まで靡かせ、瞳は虹色。
黒い闇の中、退屈していたわたしは自分をモデルに
神々を創り出した。
そして司る属性を与えると大地と豊穣の神が言った。
「創造神様、私たちが住む神殿を作りましょう」
確かに私たちには住む場所がなかったから
わたしは星を創り、そこに神殿を設けた。
そこで暮らすようになったわたし達は星に命が芽生えているのに気づいた。それはとても小さい芽。
水の神が水を注ぐと力加減ができずに星全体に
水が溢れた。後にこれは海と呼ばれるものになる。
芽が枯れそうになると大地と豊穣の神が
「元気になって」と声を掛けた。
おかげで気合いが入ったのか植物は地球全体に蔓延り
生態系が作られた。
そこでわたしは前世を思い出す。
わたしもこの星と似たような地球に
生まれていた、と。
そこで、わたしは人間を創り出し
彼らの生活を見守ることにした。
最初は平和だったけど国が興され繁栄していくと
人々の間で戦争が起こった。
領土を巡って争う我が子たちに胸が痛んだわ。
わたしがあまりにも泣いていたものだから、
ある日、神々は「お前が生態系なんて作るからだ」
「お前が朝と昼と夜なんて作るからだ」と
喧嘩を始めてしまったの。
わたしが泣きやんでも火がついたように魔法で
喧嘩をする彼らを止められなかった。
そして、月の女神が放った弓矢がわたしの胸を貫いて死んでしまい、ここに来たってわけ。
でも意外と創造するのたのしかったわ。
他の人も創造神やってみたら楽しいかも。
「なるほど、楽しまれたようで何よりです」
「ふふふ、創造神なら何度やってもいいかも」
美月は紅茶を飲みながら満足げに笑う。
「どうやらポチの上にも世界が誕生したようで
人間がうろちょろしてますよ」
「えっ!?」
見るとポチの葉の上に何かアリのようなものが蠢いているのが見えた。ぶっちゃけ気持ち悪い。
「うへえ……。
でもこうやって見守ってるのも楽しいかも」
「人間側からすれば巨人がこちらを覗き込んでいるのですから恐怖でしかないでしょうがね」
「確かに」
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