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「……僕、どんなに大絶後出版に急かされても、その辺慎重に考えてみます」
「それがいいと思う。たとえば『次回の会議までに結論を出さなくてはならないんで、いついつまでに返事してくれ』なんて言われても、保留したければ保留でいい。それでお流れになっても、アタロウくんはなにも失わないし、損もしない。もし後で気が変わって共同出版をするとしても、言えばいつでも大絶後出版は喜んで迎えてくれるよ」
「そうですよね。大事なお客様、ですもんね」
「そういうことさ。共同出版に応じる作者の多くにとって、潜在的な最大のニーズは『自分が心を込めて書き上げた物語を、多くの人に読んでもらうこと』なんだ。そのためなら数百万の出費も辞さないくらいにね。しかし現状の大絶後出版の共同出版では、その最大のニーズが満たされるのは困難だ。『作者がお客様システム』によって出版コストとリスクを作者が個人で負うことを、事前に説明してくれないのも、トラブルの種だ。ただし、もちろん、純粋に記念として出版を希望する作者や、それでもチャンスに賭けてみたい作者にとっては悪いサービスではない」
「サービスは、利用する側にも熟考と責任ある選択が必要なんですね……」
「そうだ。重ねて言うが、大絶後出版のやり方がよくないというだけで、共同出版自体が悪というわけではない。ほかの会社に頼むこともできるし、自分に合うサービスを選び、納得して利用すればいいわけだからね」
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