アタロウくんは本が出したい

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 結局、アタロウくんは共同出版をしなかった。  その代わりに、『ホゲポンゲ村のヌッチポ魔王』の同人誌を制作した。  部数は五十部。  表紙は、SNSで昔からアタロウくんがフォローしていた、大好きな同人作家に規定の料金で依頼した。  同人誌の制作を手掛けている都内の出版社と、紙見本や色見本をよくよく見せてもらって説明を受け、その紙や印刷方法ではなにができてなにはできないのかを教えてもらい、製本にも少しこだわった。  コストは、最終的に、数万円だった。  出来あがった本が届き、アタロウくんは見本誌を開いてみる。  文章は見直しに見直しを重ねたのに、「あっ、今からでもここは直したいなあ~!」と思う箇所がちらほらあった。  でも、いい本だと思った。ISBNコードはついていないけど、立派な本だった。  小説オンリーの同人誌即売会は、来週開かれる。  アタロウくんは自分のスペースを飾るための敷布やアイテムと格闘しつつ、次の公募に出す作品の執筆にも、もうとっくに取り掛かっている。  また次の、我が手で育てたい作品を世に出すために。   終
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