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前方に投げ出された男は運悪く街路灯の鉄柱に打ち付けられ、背骨は不本意な方向に曲がったまま頭からアスファルトに叩きつけられた。車のドアが閉まる音に続いて動かなくなった男に駆け寄る運転手の姿、映像はここで終了していた。
相庵警部は小川がしていたのを見よう見真似でトグルを操作する。画面のシーンは飛び飛びに戻されてついには最初の場面、木製扉が開くところが表示された。
そこからまたもやコマ送りで進める。何コマ目か進めたところで手を止めた警部が小川に尋ねる。
「あの女はメイドか? ありゃメイド喫茶ってヤツか?」
「そうですね、あれは最近評判のカフェです。メイドさんが紅茶を出してくれるんです」
「なんだ、お前、知ってるのか。で、行ったことあるのか?」
「いえいえ、かなり人気の店なのでなかなか予約が取れないんです。中心街から離れたあんな場所で人気なもんだから自分も気になってるんです。紅茶を楽しむってコンセプトだそうですが、最近はハーブティーが人気らしいです」
ハーブティー、その言葉に相庵警部は敏感に反応した。被害者のふらついた足取りとハーブティー、警部の頭の中で瞬時に怪しい疑念が沸き起こったのは言うまでもない。
すぐに時刻を確認する。時計の針は午後四時を指していた。
「小川、その店の営業時間を調べてくれ」
「公式サイトでは夜十一時までになってます」
「そうか、なら今からでも十分間に合うな」
相庵警部はおもむろに立ち上がると、きょとんとしている小川にすぐに準備しろと命じる。
「これから聞き込みに行くぞ」
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