第六話:●●向けボイスドラマのお仕事

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 乾社長の顔面はツンドラ大陸のようだった。  顔面絶対凍土。  冷たく鋭い目線を私に向けられていて部分から薄い氷の膜がはっていく幻覚まで感じてきた。 「いえ、週明けまでにあれば問題ありません。先日のエレベーターの時といい、お気遣いありがとう」 「い、いえ……」  私みたいな末端の社員に敬語で話してくれるんだ。  穏やかで上品な言葉遣い。それなのにその声には何の感情も読み取れない。冷たい目、無機質な声。  過去の派遣先では会社の代表と会話したり業務で関わるなんてこともなかったから比べようがないけれど、大企業の社長ってみんなこうなんだろうか。 「君、名前は?」 「え? あ……し……白石です」 「白石さん、覚えました」  覚えなくていいです。  覚えなくていいからどうかクビにしないでください。  そう祈るような気持ちで一杯だった。 「それでは白石さん、後ほど第一開発部まで持ってきていただけますか?」  こくこくと高速でうなずく。社長が倉庫室を出た後「一生のお願いだから代わりに持ってってぇぇぇ」としいなちゃんにまたもや泣きついたのだった。
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