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第七話:始まりと別れのコロッケ
「ほんとだ……コメントもこんなに」
スマホを覗き込むと、まだ今夜の配信から1時間しか経っていないのに再生回数が見たこともない数字になっていた。
そして、
「ショック」
「止めないで」
「日々の癒しがなくなる」
と別れを惜しんでくれるコメントが次々と投稿されていく。
「配信休止のこと、ゲリラ的な告知なっちゃって悪いことしちゃったなぁ」
「うん……」
ひよりの言葉に深く頷く。
大学受験のために私たちは「おいしいおみみ」の配信休止を決めた。少し収益にもなっていたから受験費用のことを考えると配信頻度を下げることも考えたけど、二人には受験勉強に集中してほしかった。本来なら大学を受ける生徒は塾や予備校に行くものなのにうちはそれをさせてあげられない。せめて勉強する時間を確保したかった。
「だけど配信最後が“コロッケ”ってうちららしいね。話も結構気合入ってたし」
「俺的にはもうちょい続けたかったけどなー」
苦笑しながら健がお風呂からあがってきた。濡れた髪をタオルでガシガシと拭きながらひよりのスマホを覗き込む。
「でもコロッケの回が伸びるのは嬉しい」
「お母さんが作った最後の料理だもんね」
「そんで三人暮らしで作った初めての晩ごはん」
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