おかえりなさい

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おかえりなさい

僕はどこにでもいる普通の少年だ。 ただ、1つだけ他の人と違う所がある。 それは、 僕が、生まれ変わり…輪廻転生を繰り返しているということだ。 それは、至って簡単なもの。 任意でも、不本意でも、とにかく死ねば次の生物に生まれ変われる。 そして、全く違う人生を歩めるのだ。 今まで、もう数え切れないくらい転生した。 雑草みたいな植物に転生した事もあったし、草原を駆ける小動物に転生したこともある。 海を泳ぎ回る小さい魚に転生したり、それを食べる大きな魚に転生したこともあった。 とにかく、何度も色んな人生を経験した。 まだ、満足がいく人生に巡り合ったことはない。 でも、別にいい。 気に入った人生になるまで、転生を繰り返せばいいから。 今もまた、人間として転生した。 今度は、どんな人生なんだろう。 転生してから十年。 僕は金持ちの家の息子で、欲しいものは何でも手に入った。 そして、身の回りの事は執事やメイドがなんでもやってくれた。 学校に関しても、いじめも下らないスクールカーストも一切ない、クリーンな環境で学ぶ事ができた。 でも、良いことばかりじゃなかった。 この体は、絶望的に体力がない。 少し走っただけでも息が切れてしまう。 そもそも、僕は病弱で、基本的に寝込んでいることのほうが多かった。 そのせいで友達もできないし、年の近いみんなと遊ぶこともろくにできなかった。 でも、僕はそこまで思い込んではいなかった。 気に入らない人生なら、死ねばいいだけだし。 そんなこんなで、次の人生に転生した。 そして自分の姿を見て驚いた。 それは、人間とも動物ともつかない…いや、この世の生物とは思えない、おぞましい姿だった。 もはや、生物と言うよりは動く肉塊。 そんな、おぞましい存在が自分だなんて。 理解できなかった一方、安心もあった。 気に入らなければ、また死ねばいいのだ。 おかしい。 もう100年は生きた。 なのに、まだ死ねない。 一体何なんだ、この生物は。 そう言えば、僕もこの無限ループが始まる前… 転生する前は、普通の人間だった。 確か、若い時に一人のメイドと旅をして、それから… それ以上は思い出せない。 でも、とても楽しかった事だけは覚えている。 なんだかんだ、あの時が一番幸せだったのかもしれない。 本当の幸せとは、失ってから気づくものなのか。 そんな僕の前に、同種と思しき生物が現れた。 だから、僕はそいつに言った。 「なあ、僕はどうやれば死ねるんだ?出来るなら、僕を殺してくれ!」 けど、そいつは言った。 「死?そのような事、考える必要はないかと。 だって、私達の種族は容易には死にませんもの。 寿命も1000万年以上ありますし、強い放射線を浴びても、隕石が落ちてきても、火山が噴火しても、生き残ってきた種族なので」 「え…」 絶望した。 こんな薄気味悪い姿で、1000万年以上も過ごさなきゃないなんて。 地獄だ。生き地獄だ。 「…そうか、そういうことか」 「どうされました?」 「僕、やっとわかったよ。自分がなんで生まれてきたのかが」 「あら。なぜですか?」 「僕は、特別な存在でもなんでもなかったんだ。 転生してたのは、単に過去の行いのけじめをつけるため。 良いことも、悪いことも、全部過去の僕が作り出した事だったんだ。 僕は、前世の自身の行動の責任を取るためだけに生まれてきた存在だったんだ」 「失礼ですが、それは違うかと思います」 「え…?」 「あなたは、懸命に生きて幸せを掴むために生まれてきたのではありませんか?」 「僕が…幸せ…?」 「はい。あなたの過去に何があったのかは、私は存じ上げません。しかし、大切なのは、『今』がどうであるか、なのではありませんか? 今が幸せであるなら、それ以上に何を考え、何を望まれる必要があると言うのです?」 「…なんか、梨子(りね)みたいな事言うな、君」 「梨子…?」 「あ、いや、なんでもないよ。 …うん、そうだよな。僕は今まで、自身の不幸さ、不運さを人生や環境のせいだとしか思ってなかった。 これからは、幸せになれるよう、精一杯頑張る。何のために自分が生まれてきたのか。常にそれを頭に置いて、最期まで生きてみる。 それに、長生き出来るなら、それだけ時間もたっぷりあるって事だし!まあ、見た目はアレだけどさ」 「あら、蛇足もご丁寧ですのね」 「あぁ…ごめんな。 そうだ、僕が今まで経験してきた人生の話でもしようか?どうせ、先は長いんだし」 「わかりました。…ご主人様」 「え?何?」 「何でもありません。どうぞ」 「何から話そうかな…。あ、そうそう。僕は最初、人間っていう生物として生まれたんだ。 それで、梨子っていう女の子を雇って、その子と一緒にウロボロス、っていうものを探す旅に出てね…」
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