ロックウェラ事件

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 イリス王国は大陸の南半分を有する大国である。  北東には長年にわたり衝突と休戦を繰り返してきたムーア帝国があり、北西には幾つかの中小国があった。  イリス王国王都イリスノリアは大陸の中央を横断するカザフ山脈の南側に有り、山脈から流れる豊富な水は河や湖となり街に繁栄をもたらしている、人口は50万人を越える世界一の大都市で文化・経済の中心都市として長年にわたり君臨してきた。  王都の中央に位置する広場の一角にアスルとローサが所属する冒険者ギルドが有った、一階にある受付には依頼を受注する者達でごった返している。  その建物の二階にあるギルドマスター執務室のドアが来客を告げる為にノックされた。 マリー(秘書)「マスター失礼します、王国第一騎士団長フロイス様がお越しになられました」 フロイス「失礼するよ」  この王国にはおよそ1000名近くの騎士が居るがその頂点に立つ騎士団長三名のうち最強を謳われる男が今回訪れた男『ロイス・フロイス』だ。 ガルバン・クライン(ギルドマスター)「これはこれは、ロイス殿の様な高貴な方がこの様な下賤な場所へいかようで?」  カルバンは丁寧に話してはいるが何かを含んだ言い方をする。 ロイス「今日来たのは先日のロックウェラ鉱山での事件に関してだ」 ガルバン「ほぉ…何故ロックウェラの事でうちに?」 ロイス「大方の察しは付いているのだろう?」  ガルバンは何とか話をはぐらかそうとする、しかしソファに座りガルバンを正面から見据えるロイスの眼光は相手に一分の隙も与えない。 ロイス「ガルバン……お互い忙しい身だ!余計な事は考えずに正直に話せ……」  ロイスは騎士団で、ガルバンは冒険者ギルドで、両名共にその道では名の知られた人物であった、しかしこの二人が王都に住みつくまで同じパーティーで冒険者をしていたと知る者は少ない。 ガルバン「……変わらんな……わかったよ………」  ガルバンは一冊の記録書をロイスに渡し説明を続けた。 ガルバン「二人は七日前に別件の依頼を終えた……その後の依頼受注等の記録は無い」 ガルバン「だが二人はその後何者かと話した後ロックウェラに向かった……その事は偶然みた数名の職員と一般市民から証言を得ている」 ロイス「…………」  腕を組み目を閉じたロイスは沈黙を続ける。 ガルバン「その何者かは身元も足取りも不明だが身なりはしっかりとした人物だったらしい、事件との因果関係も不明と手詰まりだ!ギルドとしても更に調査をするつもりでは有る、だが俺は何年もあの二人を観てきたがあの二人が金にならない事をするとは思えないし俺自身はあの二人が悪党だとは思えない」  ガルバンの話を一通り聴くと目を開いたロイスは立上りドアに向かって歩き出した。 ロイス「情報と言ってもそんなところか……鉱山に不法侵入し盗みを働き挙句の果てに鉱山爆破だ…お前には悪いが現状では悪党の可能性しかみえない……だがもしお前が言うのなら……」  ロイスはドアノブに手をかけて立ち止まった。 ロイス「……イヤ……協力感謝する……」  ロイスは一礼して退室した。 ガルバン(相変わらずだなロイス……しかしあのお転婆共……)  ロイスは子供の頃から変わらず余計な言動を嫌う、事務的なロイスに呆れたガルバンは立ち去ってゆくロイスの後ろ姿を窓から見つめるのだった。 ※※※  鉱山強盗爆破犯として指名手配されるアスルとローサに未来はあるのだろうか…
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