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逃亡
小窓からは森の木々を抜けて陽光が射し込んできていた。
黒髪の少女はベットに横たわり丸2日間眠り続けている、ベットの横には赤い髪の少女が椅子に座り看病疲れの為かウトウトと船を漕いでいた。
アスル「……………………」
気が付いた黒髪の少女アスルはゆっくりと瞼を開こうとする、しかし窓から差し込む陽光が眩しく開ききれないでいた。
自由のきかない身体に不安を感じながらもひとつずつ体の状態を確認する。
アスル(指は……腕は脚……動く……痛みもな……起き上がれ?!!)「痛っ!!」
上体を起こそうとすると脇腹に激痛がはしりその声に反応して船を漕いでいたローサが目を覚ました。
ローサ「アスル!目が覚めたのね良かった!」
目を覚ましたアスルにホッとしたのかローサの眼には涙が溢れていた。
アスル「痛いっ!」
起き上がろうとするが身体を捻ると傷口が痛んだ。
アスルの肩をローサが優しく抑え横にさせる。
ローサ「動いちゃ駄目だよ!脇腹をケガしてるから!」
ロックウェラで無数の魔法弾から逃げ延びる為にアスルとローサは地割れの底を流れる水流に身を投げた、激流に流される中でアスルは脇腹を負傷したようだった。
アスル「帳簿……ローサ帳簿と証拠品は?」
ローサ「証拠品は何とか無事だよ……でも帳簿は……」
帳簿は爆風で飛ばされたときに手から離れた様子だった、他の証拠品は革袋に入れてあったので無事だったのだ。
ローサ「それよりアスルは酷い裂傷だったんだよ!小屋のお爺さんに助けてもらえたから良かったけど!」
アスルの左脇腹には10センチ程の傷があるが丁寧に縫合されていた、小屋の老人は狩人で獲物に傷を負わされた時は自らの手で縫い付ける事もしばしばあると笑って話してくれた。
老人が用意してくれた温かなスープを頂き息をついたのも束の間、二人は今後について話し合わなければならなかった。
アスル「帳簿と証拠品を奪う所迄は問題なかった」
当時の事を順序立てて整理しようと思ったのだ。
アスル「証拠品としては暗号だらけの手帳と書類、それにレア鉱石……」
ローサ「それにしても結構腕のたつ奴等が多かったね……」
ローサは頬を膨らませながら難しい顔で当時の事を思い返していた。
アスル「鉱山を後にしようとした時に王国騎士団と鉢合わせた……」
ローサ「あいつ等容赦無くぶっ放してきたよね〜」
ローサはケラケラ笑いながら他人事のように話した。
アスル(何故あの時あの場所に騎士団が……ハメられた?)
現状では全ての人が敵にしかみえないアスルだった。
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