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明くる日の昼前、アスルは宿屋のベッドの上で傷痕の処置をしていた。
アスル(傷はほぼ塞がったな、さすがに安物ポーションじゃ傷痕までは消え切らないけど……)
酒場に居た商人にポーションの余を期待したが王都で卸したばかりで他人に譲れる物がコレしか無いと個人用の安価なポーションを譲ってもらったのだ。
アスル(まだ内側に痛みは感じるが馬での移動なら問題はない……)
昨晩酒場から戻ったアスルとローサは話し合いの結果この宿場町にも長居は出来ないと結論を出した。
先ずは王都に戻り依頼人に連絡を取らなければならないと判断しそれに向けて行動する事とした。
二人は王都にさえ潜入出来れば依頼人に連絡を取る方法と頼りになるツテを持っているのだ。
ローサ「只今!馬は手配出来たよ!」
ローサは移動用に馬の手配をしに出かけていたのだ。
ローサ「ただ悪い知らせが有る!騎士団が街に来ている!猶予がなくなったよ!」
アスル「物資の方は?」
ローサ「パンと干し肉位は確保出来てる」
まだまだ準備不足ではあるが二人は宿屋を後にし厩へ急ぎ足で向かう事にした。
宿場町の出口付近にある厩までの街道は天幕が張られ色々な屋台が立ち並び多くの人が行き交っていた。
人が溢れる街道を目立たぬ様に進むアスルとローサだったが、間が悪く二人は呼び止められてしまう。
騎士団の男「おいそこの二人待て!」
アスルとローサは厩まで今少しのところで呼び止められそうになった。
アスル(まぁこうなるよね……)
ローサ「私に任せて先に走って!……」
ローサはアスルを先に走らせると体術『加速』を発動し一瞬にして天幕を支える木材を数本斬り倒した。
騎士団の男「待て!!」
街道の人々「きゃあ!」「なんだ!」
天幕が落ちてくると辺りはパニック状態となり騎士団の男も身動きが取れなくなった。
何とか厩へ辿り着いたローサの目の前には準備の終えたアスルが騎乗のままローサを待ち構えていた。
アスル「ローサこっち!」
もう一頭にローサが跳び乗ると二頭の馬は揃って駆け出した。
ローサ「危なかったね!」
無邪気なローサはイタズラっぽく笑う。
アスル「気を抜くのはまだ早いわよ!……きた!」
二人を追って先程とは別の騎士が馬で追いかけてきた。
ローサ「どうするアスル?迎え討つ?」
鉱山以来鬱憤の溜まっていたローサは剣に手を掛けウズウズしていた。
アスル「今は駄目!そのまま進んで!」
アスルは後方の騎士に右手の指を向けて狙いをつけた。
アスル(弱い目にしてあげるから死なないでよね……)
狙いをつけたにダークバレットは騎士が身に着けている甲冑の右肩に当たった。
『ドンッ!!』
騎士「ガァ!!」
甲冑が凹む程度で済んだが強烈な衝撃で騎士は落馬した、その音に驚いた馬は明後日の方向へと逃走していった。
ローサ「上手く行ったね!」
ローサはニカッと笑って親指を立ててウィンクをする。
アスル「やはり直線的に王都に向かうのは無謀だな……南へ迂回してから向おう!」
アスルとローサは辺りに人が居ないのを確認すると王都への街道をそれて大きな森林の中を南へと向かう事にした。
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