逃亡

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 二人が宿場町を発ち三日が経った、森林を抜けて暫く平野を往くと峡谷が有りその峡谷を横切ると二人が目指す街ブランチが有るのだ。  普段は静かな地域なのだが魔物が出る為に商人や旅人はこのエリアを通ろうとはしなかった。 「ドーン!ドーン!」  森の中から凄まじい衝撃音が鳴り響きその音と同時に森の木々が弾かれる様に倒されていく。 「ぎゃあぁぁぁ!!」  その衝撃音の前には叫びながら全速力で走るアスルとローサの姿があった。 ローサ「アスル!なんとかして!!」 アスル「何とか出来る状態か!」  宿場町を出てから干し肉でやり過ごしていた二人だったが我慢の限界を迎えていた。  そんな時ローサの眼前に猪型の魔獣ボアの子供が現れたのだ。  アスルならば子供の近くには必ず危険な親も居るはずと警戒しやり過ごそうとするのだがローサは違った。 ローサ(肉!!)  体術『加速』を使いボアの子の背後に詰め寄ったローサはローズウッドを振りかぶった…がしかし! ローサ「!!!」  ボアの子のその向こう側に全長三メートル程の親らしき巨大な猪型の魔獣ビッグボアが此方を見据え地響きのような唸声を発していた。 ローサ「!!ヤバ!!」  ローサは咄嗟に逃げ出したがアスルなら突然逃げ出しはしなかっただろう、何故ならボア種は背中を見せて逃げる者を追い掛ける習性があるからだ。 ローサ「アスル!逃げて!」  逃げながら目の先に居たアスルに叫ぶ。  アスルも一目で全てを察して走り出した、ボア種と追いかけっこを始めてしまうとひたすら逃げ続けるしか手が無いのである。  森を抜けてしまい障害物が無くなるとビッグボアの速度は上がり続ける。 アスル「アンタ何とかしなさいよ!」 ローサ「無理無理無理無理!」 アスル「アンタが引き連れてきたんでしょ!」 ローサ「無理だって!あれだけ勢いついてたら斬るより先に弾かれちゃうよ!」  森という障害物が無くなり速度を増したビッグボアはアスルとローサの二人を至近距離にまでとらえていた。 「トガッ!」  二人がすり抜けた岩をビッグボアが粉砕した音だった。 アスル「もぉぉぉ!あの大岩に向かって走るわよ!」  二人はすぐ後ろに鼻息荒く追ってくるビッグボアの気配を感じながら懸命に走った。 アスル「ギリギリで避けて!ギリギリよ!…………今だ!」  岩山の直前で二人は左右に別れる、その直後平原に大音響が響き渡った。 「ゴオンッ!!!」  岩山と激突したビッグボアはフラフラと千鳥足で後退してドサッと倒れた。 ローサ「今なら殺れる!」 アスル「えっ?殺るの?!」  ローサは剣を片手にビッグボアにかけ寄る!  アスルはしょうが無しにローサを追い掛けた。 「ズサッッ!」  ローサの一撃はビッグボアの急所である首の下(腹)側を大きく斬り裂いた、ビッグボアは悲鳴を上げる間もなく息絶えたのだった。 ローサ「よっしゃぁっ!ビッグボアゲットだぜっ!」  ローサはビッグボアの上に立ち剣を掲げ大喜びだった。 アスル「はぁぁ……」  走り疲れたアスルは体内の空気を全てはき出す位の大きなため息をついた。 ローサ「お肉!お肉!」  ローサは小躍りしながらビッグボアを解体しようとしている。 アスル「馬鹿ローサ!!」  アスルは激怒して叫びローサはその声に硬直した。  昨晩の就寝時、馬の手綱を大木に括り付けたのはローサだったが括りが甘く逃がしてしまっていたのだ。  更には今回のビッグボア騒動だ!一つ間違えれば怪我で済まない事体になっていたやもしれない。 ローサ「怒んないで〜ごめんなさい〜……」  実の所ローサは冒険者達の間では凄腕の剣士として有名である意味恐れられていた、しかし一方幼馴染のアスルにだけは昔から頭が上がらないのだった。  コッテリ絞られたローサは泣きながらボアの後ろ脚を胴体から切り離していた、日も陰ってきたので今夜はこの場で夜営する事に決めた二人は持ち運べるだけの量を切り取りギルドで買い取ってくれるボアの牙を抜き取った。  腹一杯にボアの肉を堪能した後は逃亡生活の疲れもあってか幸せそうに深く眠りに就いた事は言うまでもない。 ※※※
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