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天使のフォトスポット
あの日。
特に親友でもないのになんとなくの話の流れで、買い物に一緒に行ったよね。
服の趣味とか、好きな歌とか、推し活はしてないとか、クラスの皆とはあまり合わない趣味の、私とあなたはとても好みが似ていてお互いに驚いたね。
元々体が弱かったんだ。と、穏やかに微笑むあなたは、そういえば小学校は休みがちで、それだから中学校でも友達がいなかったのか。と気が付いた。
その日も少し歩くと休憩して、買い物したら休憩して。そんな風に歩いている時に、大きな天使の羽が描かれたフォトスポットを見つけたんだよね。
私は気恥ずかしくて、あなたも気恥ずかしくて、でも、せっかく見つけたんだから撮ってみなよ。と、私よりも天使にふさわしい雰囲気のあなたをむりやりフォトスポットに立たせて、スマホで撮影したね。
結局私も撮ったけど、写真写りを見たときに、あなたの方は本当に良い角度で写っていて、まるで本物の天使みたいだったね。
斜めに日が入って、金色の光が差し込んで、眩しそうに眼を閉じるあなたの後には本当に背中から生えたような角度で壁に描かれた天使の羽。
あんまり綺麗だから、プリントアウトしようというと、あなたはやり方がわからないというから一緒にプリントアウトしに行ったよね。
たった1週間前だったのに。
今、私の前に横たわるあなたの上には、あの日撮った、天使になったあなたの写真が飾られている。
ねぇ?どうして?
あなたのお母さんが私に近づいてきて話してくれた。
あなたはもう長くなかったので、あなたの希望通りの生活を送らせていたって。
あの日の事は最後まで楽しそうに話していて、笑いながら逝ったんだって。
遺影はこの写真が良いってあの買い物から帰った日に、あなたが言ったんだって。
ねぇ?どうして、なんでそう言う大事な事、話してくれないのかな?
私だけ親友になったつもりでいたのかな。
あぁ、でも、もうあなたの住まう所は空の上になってしまったのだから。
直ぐにお別れな事を知っていたから、あなたは私と親友になろうね。とか。
わざと言わなかったんだね。
私が沢山悲しくなるから。
でも、天使になったあなたに。
私の心の中には天使になった親友がいるのだという事が刻み込まれたことは、覚えていてほしいな。
天使の梯子を見るたびに、きっと私はあなたの事を探すでしょう。
さようなら。
天使の梯子を見たときにあなたがいたら手を振ってくれますように。
【了】
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