10人が本棚に入れています
本棚に追加
「君はニセモノだろ」
ある時、私はそんなことを言われました。私は動揺しました。
しかし、感情を露わにしてはいけません。私は何があっても人間のフリをしないといけません。「違うよ」と、私は微笑みました。
「君は人間を演じている。人間のフリをしている。僕には分かるんだ」
私は何か言い返そうとしましたが、引きつった笑顔のまま、何も言えずにいました。
「なぜ分かるかって? だって、僕もニセモノだから」
僕もニセモノ。その言葉に、私は混乱しました。ニセモノが、ニセモノだと自分から言えるわけがありません。だって、この世界のルールでは、ニセモノはニセモノであることを隠し、人間を演じないといけないからです。
その時、私はぎゅっと抱きしめられました。叫ぼうとしましたが、その厚い胸板に抑えられ、何も言葉にできません。逃げ出そうとしても、その強い力に身動きがとれませんでした。
「君はもう演じる必要はない。僕は君のすべてを分かっている。これからは、ありのままの、本物の気持ちで生きていいんだよ」
その言葉に、私の目から涙が溢れました。ニセモノは、泣いてはいけません。周りが悲しんでいなければ、悲しい気持ちになってはいけません。どんな時も、自分の心を押し殺さなければいけません。いくらそんなことを思っても、私の目から涙は止まりませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!