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十月三十一日。
年に一回行われる、ハロウィン、またハロウィーンと呼ぶイベントがある。
カボチャやカブをくりぬいて作る『ジャック・オー・ランタン』を飾ったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して近くの家を訪れてお菓子をもらったりする、夜のお祭りだ。
私と親友は社会人になっても毎年、ハロウィンを大切にしている。
「ねぇねぇ、今年の仮装は何にしようかー?」
「もう私たちも大人だからね。子どもっぽい仮装はしたくないわ……」
「んー、天使とかはどう?」
……なによそれ。天使?
天使ってあの、羽根が生えている天使?
天使の仮装なんて聞いたことがないけれど。どうしてそんなことを思いついたのだろうか。
「天使、いいと思うの。白いワンピースに羽根をつけて、天使の輪っかなんかを手作りして。可愛くない?」
「まぁ、そうかもしれないけれど。それも子どもっぽい気が……」
「お願い、一緒にやろうよ! ね、いいでしょ?」
そんなに一生懸命言われたら、頷くしかないじゃない。
私たちは羽根や輪っかを手作りして可愛らしい真っ白のワンピースを着て、天使の仮装を楽しんだ。
あれから、何十年も過ぎた。
もうあたしも年をとって――子どもどころか孫もいる年齢になってしまったね。
あんたが亡くなってから数十年、ハロウィンというイベントなんぞ忘れてしまったよ。
でも、子どもも孫もいて、こんな幸せなことはないさ。
仏壇に手を合わせ、親友のことを思い浮かべる。
すると、空から羽根が生えていて、輪っかのようなものが頭の上にあって、白いワンピースを着ている子が現れる。
「お迎えだよ」
その子は笑ってそう言う。
……笑顔が、あんたに似ているね。
「天使さんからのお迎えなのかい?」
「うん……また会えたね」
「……あぁ。天使さん、待ちくたびれたよ」
今度は仮装ではなく、空の上では本物の天使になれるかもしれないね――。
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