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「……最近は、洋傘修理の仕事はあるの?」
「こないだ大雨が降った時に、だいぶ修理をしたわ。でもそれっきり」
枯葉を見ながら、隆子はそう言った。
そんな状況で、生きていけるのだろうか。
ひゐろは隆子の行く末が、とても気になった。
「お姉ちゃんはまたしばらくここを留守にするけど、来年からはここに戻って来られると思うわ。その時は、また立ち寄ってね」
「ありがとう。お姉ちゃん!」
隆子は立ち上がり、帰って行った。
本郷の家から、お饅頭一つでも持ってくれば良かった。
ひゐろは、とても後悔した。
それから二時間ほど自宅を整理し、干した布団を取り込んだ。
ひゐろは久しぶりに家事に追われ、非常に疲れてしまった。
帰りは人力車の揺れが心地よく、ひゐろは眠りに誘われてしまった。
帰り着いたのは、十八時頃だった。
「ただいま!」
玄関に、匡を背負った女中が出てきた。
「おかえりなさいませ。今、匡おぼっちゃまは寝ておりますが、どうされますか?」
「今日、一日ありがとうね。匡は預かります。助かったわ」
ひゐろは匡を受け取り、おんぶ紐を締めた。
「皆さん、居間にお揃いですよ。
女中は、ひゐろに手招きをした。
居間に行くと、重蔵兄さんと三吉が関東日日新聞を見ながら話をしていた。
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