第四話:たった一人の下宿人

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「お母様の話だと、そうらしいの」 「でもうちの下宿は、特別高くないんじゃないか?しかも下宿人は、一人だけだし」 「私もそう思うけれど、本郷はよその地域に比べると比較的高いのですって。それでね、本郷の下宿の相場が知りたいのよ。それがわかれば、うちの下宿代が高いか否かがわかるでしょう?一体、どうしたらいいのかしら……」 「それは、簡単だよ!重蔵兄さんに、聞けばいいのさ」 「……重蔵兄さん?」 「だって兄貴は、銀行員だろう?本郷の下宿の相場くらいは、調べればすぐにわかるさ」 「……なるほど!三吉兄さん、()えている!」 重蔵兄さんが帰ってきたらすぐに伝えようと、ひゐろは思った。 「……三吉兄さん。今の話でちょっと気になったのだけれど、一人いる下宿人は、どのような方なの?私はお会いしたことがないわ」 「……そうか。ひゐろは、いまだに会ったことがないのか」 三吉は下を向いて、タマを撫で続けた。
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