第十話:晴天の日、布団を干しながら

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そう思いながら、縁側にある物干し竿に布団を干しはじめた。 空は晴天だ。 布団を広げると、夫の香りがほのかに残っている。 いつ夫は、この家に帰ってくるのだろうか。 そしていつ私を抱いてくれるのだろうか、と空を見上げながらひゐろは思った。 すると突然、遠くから 「お姉さん!お姉さん!」 と呼ぶ声がする。 ひゐろは共同水道のほうに身体を向けると、そこには隆子が立っていた。 相変わらず襤褸(らんる)を着ていたが、おかっぱの髪は艶やかに光っていた。 「……お姉さん、帰ってきたの?」 隆子は驚いた様子で、そうたずねた。 「ううん。布団を干すために、ちょっと寄っただけよ」 「そう。赤ちゃんは生まれたの?」 「ええ。かわいい男の子よ。今日はお姉さんの実家に預けているわ。せっかくだから、少し話をしましょう」 隆子は黙って、縁側に腰かけた。 「お母さんの身体の調子はどう?少し良くなった?」 すると隆子は唇を一文字に結び、ゆっくりと口を開いた。 「……母ちゃんは、亡くなりました」
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