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第十一話:隆子との再会
「隆子ちゃんのお母さん、亡くなったの?」
すると隆子は、はらはらと涙をこぼした。
「八月の暑い日、尋常小学校から帰ってきたら、押入れの中で冷たくなっていました」
「……」
ひゐろは、言葉を失った。
「隆子ちゃん、食事はどうしているの?」
「顔見知りのおじちゃんが、夕方になると食べ物をくれます。それを一日かけて、弟と分け合って食べます」
「……顔見知りのおじちゃん?」
あの横川町のトンネル長屋で、残り物を一日かけて食べる生活。
衛生面では大丈夫なのだろうかと、ひゐろは思った。
しかも顔見知りのおじちゃんとは、誰なのだろうか。
危ない人では、ないのだろうか。
「十七時に、北割下水のところに行くとくれるのよ。おじちゃんがおにぎりや、お煮付けを」
「危ない目には遭っていない?隆子ちゃんは女の子なので、十分気をつけてね」
「ありがとう。お姉ちゃん」
隆子は色づいた枯葉を拾っては、膝の上に載せている。
決して柄が良いとはいえないトンネル長屋であっても、隆子はあまり人を疑うということはないのだろうか。
しかも、そのおじちゃんがいなくなったら、食事はどうするのだろうか。
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