第二話:金解禁の審議と編み物

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第二話:金解禁の審議と編み物

翌朝、ひゐろは朝食をとろうと居間に向かった。 民子は匡を背中におぶって、食卓に皿を運んでいた。 「ひゐろ、おはよう。昨日は、疲れたようね。そこに座ったら?」 「ええ。ありがとう。お母様」 ひゐろはゆっくりと、ちゃぶ台の前に座った。 「今日は、秋刀魚(さんま)の塩焼きよ。上手く焼けたわ」 民子はひゐろの前に、秋刀魚(さんま)の塩焼きの皿を置いた。 「わぁ、おいしそう。旬の魚だから、楽しみだわ」 「……そうそう、斎藤さんは元気だった?」 「ええ。とても元気で、匡の誕生をとても喜んでくれたわ」 「それは良かったわね」 そこに三吉がやってきて、新聞を広げながら食卓に座り込んだ。 「三吉兄さん、おはよう」 「…あぁ、おはよう」 「ねえ、三吉兄さん、昨日私の枕元に、雑誌が置いてあったの。新しい『女性読本』よ。誰が置いてくれたのか知らない?」 新聞を広げながら、三吉は面倒くさそうに答えた。 「そんな気が利いたことをするのは、母さんが重蔵兄さんに決まっているだろ」 それを聞いていた民子が、 「私じゃないわよ」 と口を挟んだ。 ――――重蔵兄さんか。 黙って贈り物をする、というのは重蔵兄さんらしい。
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