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「匡から離れると心配だから、私があなたの部屋へ行くわ」
ひゐろは自室に戻り、民子が毛糸とかぎ針を持ってひゐろの部屋にやってきた。
民子は早速、鎖編みの基礎から教えはじめた。
匡は目が覚めたようで、少しぐずぐずと泣きはじめた。
「斎藤さんは、匡に会いたいでしょうね」
民子は匡をあやしながら、ひゐろに話しかけた。
「ええ。……お母様、実は斎藤さんが年内に釈放されるらしいの。先日、面会に行ったらそのように話していたわ」
「本当に?それじゃ、あなたたち三人で暮らせるの?」
「釈放の日程はまだわからないみたいだけれど、そう話していたわ」
ひゐろは編み続けながら、そう返事をした。
民子は目に涙を浮かべながら、
「良かったわね……」
と言った。
「それでね、お母様。私は十一月から働くわ。夫もすぐに働けないでしょうし、家賃を払い続けなくてはならないから」
「大丈夫?家庭の経済を支えるのが、あなたの細腕になるのよ」
民子は涙を拭いながら、そう言った。
「働いていれば何とかなるわ。心配しないで」
ひゐろは笑って、そう返した。
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