万歩計

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 スマホの万歩計アプリの調子が悪い。  かなり歩き回っている筈なのに、まったく数字がカウントされないのだ。  インストールし直すか、別のアプリに変えるかしないと。  そんなことを思っていたら、とんでもない事実に気づいた。  俺の足、ギリギリで地面に着いてない。  一センチにも満たないが、確かに体が宙に浮いている。  いつからこんなふうになってる!?  必死に記憶を辿った結果、衝撃の事実が判明した。  俺、死んでもう半月以上経ってた。  よくよく思い出してみれば、出かけてうろうろしていたけれど、会社に行っていた訳ではないし、どこかの店に入ったりもしていない。  死んだことが判ってなくて、何となく習慣で家を出て、よく判らないままそこらじゅうを彷徨い、家に戻っていた。  スマホも、本当はもうないのだろう。だけど生前のイメージが、俺の手元にスマホを出現させていた。けれど歩いた歩数は日によってまちまちだったから、そこは反映されず、万歩計はいつも動かなかったという訳だ。  自分が死んでいると判った以上、もうここにはいられないな。祈るなりなんなりして、あの世からのお迎えを待とう。 万歩計…完
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