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「だ、大丈夫。服越しだし」
「......?何か隠してる?」
こういう時ばかり晴也は無駄に鋭くなる。目を細めて、頭から爪先までしっかり目を通す。やばい、このままじゃ乳首に絆創膏を貼っていちいち反応をしてしまうのを抑えていた事がバレてしまう...!
こんなバレ方は絶対──
「あ」
ぺろんと服を勢いよく剥がされ、もろ上半身が見える形になってしまう。頑なに服を脱ごうとしない僕を見兼ねて痺れを切らしたのか、遂に晴也は僕の反応を待たずして強行突破してきた。
「それ....」
「ば、ばか!」
慌てて服を下ろして丸くなる。
キョトンと呆けていた晴也は静かにガスコンロの火を止めると、俯いたまましゃがみ込む僕の背中を摩りながら「祐樹」と声を掛けてくる。
「何か悩みとかあるなら聞くよ。俺は祐樹が悩んでいる事で笑ったりしないよ」
「...嘘だ。絶対笑うし。その声掛けがちょっとばかにしてる気がしてならないし」
そう言いながら晴也の顔をチラリと見ると、彼はニコニコ嬉しそうに笑っていた。「笑ってるじゃんか...」とじとっとした目で呟くと、彼はしまったと頬を引くつかせた後困った様に続ける。
「ごめん.....触り過ぎたのかな。祐樹には悪いけど、俺が祐樹の身体を変えてるみたいでちょっと嬉しい」
「嬉しい──じゃなくて!こっちは私生活に支障をきたすレベルでくすぐったいから絆創膏して耐えてたの!そういうえっちなやつじゃないから」
あー、もう、やめだやめ。
真面目に相談する内容でもないし無理矢理切り上げてしまおう。
そう思って立ち上がったのに、晴也はまだその話題から逸らそうとしない。茹でた野菜をまな板に置きながら「暫く触るの控えるか」と呟く。触るのを控える──その一言に「え」と自分は思わず彼の方を見た。
「だって祐樹、本当に辛そうだし.....。掠れる度にくすぐったいって事は結構腫れてるんだよね?暫く様子見って事で俺も乳首には触れない様にするよ」
「あ....うん」
思ったより、あっさり彼から乳首触らない宣言をされて拍子抜けされてしまう。てっきり、もう少しいじられたりとかあるのかなって身構えていたのに。
(.......いやいやいや、何残念がってるんだ自分は!)
慌ててかぶりを振って煩悩を振り払う様に野菜を切り始める。既に晴也は「猫の手だよ、祐樹」と何事も無かったかの様に話し掛けてくる。
乳首の安寧は保たれた。
これでこの話は終わりだし、えっちの時も気を遣ってくれる事になった。
僕の望んだ通りの展開な筈なのに....
(少し寂しいだなんて...僕は我儘かな)
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