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男性より先に降りることになり、何度も何度も、お礼を言った。
「やりがいありました」
と、男性は笑顔で手を振ってくれた。
そのさわやかな顔立ちから、よくぞ作れたものだと......。
確かに研修を受けたであろう変顔だった。
寝かせて天使にした歌声も、すごかった。
「夜泣きにならないように、そろそろ起こそうか」
武史が腕を数回、揺らすと、愛花が天使の寝顔から、ゆっくりと目を空けた。
ぼんやりしていたけど、急に声を出して笑った。
「さっきの変顔を思い出してるみたい」
武史がうなづいた。
違法以外は、世の中のどれも立派な仕事だけれど。
その立派な仕事が一つ増えた世界で、私たちは守られている。
それを知った日だった。
季節柄、風は冷たく、だけど心は、ほっこりしていた。
――完――
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