時給、104円

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男性より先に降りることになり、何度も何度も、お礼を言った。 「やりがいありました」 と、男性は笑顔で手を振ってくれた。 そのさわやかな顔立ちから、よくぞ作れたものだと......。 確かに研修を受けたであろう変顔だった。 寝かせて天使にした歌声も、すごかった。 「夜泣きにならないように、そろそろ起こそうか」 武史が腕を数回、揺らすと、愛花が天使の寝顔から、ゆっくりと目を空けた。 ぼんやりしていたけど、急に声を出して笑った。 「さっきの変顔を思い出してるみたい」 武史がうなづいた。 違法以外は、世の中のどれも立派な仕事だけれど。 その立派な仕事が一つ増えた世界で、私たちは守られている。 それを知った日だった。 季節柄、風は冷たく、だけど心は、ほっこりしていた。 ――完――
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