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「コレ、なんですけど」
わたしは後ろに隠していた、その重要パーツを両手で柏木静夜に差し出した。淡い桃色のハート。
「いわゆる『こころ』というやつです、はい」
「あー……はいはい。あー、なるほど」
「す、すみませんでした! さぞや、ご不便があったかと存じます。いやもう、本当に申し訳ない」
人間というのはおかしなもので、目に見えないとされているこころというやつは、基本的には脳なのだ。けれど、天界で製造するにあたっては脳のほかに、このハートを最後に押し込まなければ喜怒哀楽を司るこころというものが機能しないというのだから、まったくもっておかしな話である。
だから、先ほどからこの柏木静夜は驚きもしなければ怒りもしない。ただただ無表情のまま淡々としている。
「それで? どうするつもりなの?」
「それは、まあ……二十五年も経ってしまいましたが、このハートを柏木様のお胸にぐっと」
「ぐっと?」
「押し込んで完全体にしようかと」
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