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あーあ、失敗失敗。
やっぱりこころなんて要らなかったんじゃん。
ずっと疑問だった。天界から覗きみる人間界は、だれも彼もが感情に支配され愚かで醜い争いを続けている。わたしはそれがずっと疑問だった。こころというパーツを押し込まなくても人間は機能するのだ。そう、柏木静夜のように。
彼はわたしの実験第一号だった。最後の仕上げをせずに人間界へと送りだし、彼のハートはこっそりずっと保管していた。それがかみさまに見つかってしまって大目玉をくらい、仕方なく柏木静夜へとそのハートを戻しに行ったわけなんだけど──死んじゃったじゃん。
理由はよくわからない。
ハートをぐっと押し込んで暫くした後、柏木静夜は白目を剥き口から泡を吹いて死んでしまった。要するに、それほどまでにこころというやつは罪深いのだ。
だから、わたしはこれからの人間のために、もうこころを与えないことに決めた。レーンに流れてくるあかちゃんを抱き上げ、ハートを入れる素振りで握りつぶす。保管なんてしてたからバレたのだ。証拠は隠滅してしまえばいい。やわいこころは容易く握りつぶせるし、傷がついたらすぐに霧散して消えてしまうほどにこころは脆い。
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