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そして今、恐神は飛行機に乗りロンドンを目指していた。窓の外を見つめる恐神の手には1枚の写真が握られていた。
ロンドンのガトウィック空港に到着し、入国審査を終えた恐神が空港内に姿を現すと、「あ!!」と大きな声が聞こえ、恐神が声の主に目を向けると中高校生くらいの女性が満面の笑みで手を振っていた。
恐神がその女性に向かって歩き出すと、女性は嬉しそうに恐神に駆け寄り、そのまま恐神に抱きついた。
「なっ!?」
突然の行動に恐神は困った表情で固まった。
「恐神蓮生さん!ですよね!?」
「あ、あぁ。君はミリアが用意したコーディネーターか?」
「そうです!ロンドン在住の神掛雫、19歳です!ミリアお姉ちゃんからは恐神先生を丁重におもてなしするように言われております!」
雫は満面の笑みで敬礼のポーズをした。
「ははは…よろしくお願いします。」
まさか19歳という若さの女性がコーディネーターとは思いもせず、恐神は苦笑いで応えた。
「では早速行きましょう!ミリアお姉ちゃんからは、しっかりと観光名所も案内することって言われてますから!」
意気揚々と出発しようとした雫だが、恐神は「あの…。」と声を掛けて足を止めた。
「どうかしました?」
「その今回の目的については。」
「フフ、勿論理解してますよ!けど、ミリアお姉ちゃんからはまだその人とはアポが取れてないので暫く待って欲しいって言われてるんですよ!」
「…そうですか。」
「では行きましょ!」
雫が再び出発すると、恐神はスーツケースを引きながら後を追った。空港の外にはセダン型の車が止まっており、雫はスマートキーで車のロックを外すとトランクを開けた。
「どうぞ!」
「…えっと、君が運転するのかい?」
「勿論ですよ!運転には自信あるんです!」
「あの…見た目はもっと若くも見えますが、19歳ですよね?」
「…あ、なるほど!私は国籍もイタリアなんで国際免許じゃないんですよ!イタリアも18歳から免許取れるんで!さ、早く早く!」
雫はスーツケースをトランクに仕舞うと、運転席に乗り込んだ。恐神は後部座席に乗り込みドアを閉めた。
「イタリアと言えば、食も色々ありますけど、とりあえず有名なスポット少し回って今日はホテルに行こうかと!バッキンガム宮殿に向かいますね!」
「ほほぅ。」
コーディネーターが雫ということに若干の不安を感じていた恐神だが、有名な観光名所を回ることを想像すると自然と笑みが溢れた。
バックミラーでその様子を見た雫は、フフフと笑いアクセルを踏み込んだ。
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