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数時間後。
「さぁ、恐神さんどうぞ。」
雫が車のドアを開けた。
「ありがとう。いやぁ、ほんとにロンドンは素晴らしい。」
雫は運転席に乗り込むと車を発車させた。
「今日はこんなもんにしときましょ。ミリアお姉ちゃんが予約したホテルに向かいますね。」
「バッキンガム宮殿も大英博物館も素晴らしいものでした。そして、何より神掛さんの解説も素晴らしいです。」
「フフフ、趣味です。せっかく世界から注目されるものが溢れた都市に住んでるんで、この街のことをもっと知りたいって思ったんですよ。」
「なるほど。私のために覚えた知識ではないことは明白でした、感服しました。」
バックミラー越しに微笑みかけた恐神を見て、雫は照れ笑いをした。
「ホテルではルームサービスで夕食も用意してあります。今日はゆっくり休んでください。」
ホテルに到着し、恐神がスーツケースを引きながら部屋に入ると、その光景に固まった。ベッドが2つ並んでいたのだ。
「…あの、ここに泊まるのは私1人だけでは?」
恐神が恐る恐る振り返りながら雫に問い掛けると、雫は「え、私もですよ。」とサラリと答えた。雫は自分用の荷物が入ったボストンバッグを奥側のベッドに置くと、「ふぅ。」と一息つきながらベッドに腰掛けた。
「え、あの、流石に年頃の女性と2人というのは…。」
「あれ、恐神さんってロリコン?」
「…違いますけど。」
「なら変な気起こさないでしょ!問題なぁし!」
「し、しかし…。」
雫はベッドから立ち上がると、恐神に近付き人差し指を恐神の唇に当てた。
「ミリアお姉ちゃんに言われてるの。ずっとあなたの側に居て命に変えてもあなたを守るようにって。お姉ちゃん曰く、あなたはナイスボディな大人な女性にしか興味示さないから私が適任ってことになってんのよん!」
「…ミリアの仕業か。」
「ま、とりあえずお腹空いたしご飯食べましょ!すぐにルームサービスが来るはずだから。」
雫の口調が変わったのを恐神は気付いた。
「…ミリアそっくりだ。」
「ん?なんか言った?」
「いえ。…確かにお腹減りましたね、食事が楽しみです。」
「ここの料理美味いってお姉ちゃんが言ってましたよん!」
それから間もなく、雫の言う通りにルームサービスが届き、恐神は雫に勧められるがままワインを堪能しながらフルコースを味わった。
…ん?
恐神は気が付くとボヤッとした視界が広がり、窓際にぼんやりとした雫の姿を捕らえた。
…寝てしまいましたか。
「…わかってる。」
…ん?神掛さんは誰かと電話中か。
恐神は目を閉じた。
「まだアポが取れないのね。…分かってるわ、恐神さんは私が守るから。ミリアお姉ちゃんこそ自分の身を案じてよ。」
…どういう意味だ。私を守る…何から?
「…うん、またね。」
雫は電話を切り、窓際の椅子に腰掛けた。
「…ふぅ。」
「いやはや寝てしまいましたか。」
雫は突然の恐神の声に驚いた。
「…どうかされましたか?」
「いつから起きてたの?」
「…今ですけど。何か?」
「ううん。…さっきまで下着姿だったのよ。見たかった?」
「ミリアに怒られますからご遠慮させていただきます。」
恐神は笑いながら言うと、バスローブとタオルを手に取りバスルームに向かった。
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