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「私は知らないよ。ただ、ミリアお姉ちゃんに…っ!?」
雫はサッと立ち上がり、恐神の背後の先に視線を集中させた。
「…雫さん、どうかしましたか?」
「…毎日ホテル変えてるのに。恐神さん、ここは危険かも。さっさと出るわよ。」
「え?あ、ちょっと待ってください、まだこのヨーグルトが…。」
呑気なことを言っている恐神にイラッときた雫はヨーグルトを奪い取り、ヨーグルトを残っていたパンに全て乗っけると、パンごと恐神の口に詰め込んだ。
「ほら、立って!」
「ひょ、ひょっと。ひずくすぁん、ひどいでふ。」
恐神は喉に詰まらないように必死で飲み込みながらレストランを後にした。
「ごくんっ。い、一体どうしたんですか!?」
「とにかくここには居られない。…今日予定のホテルも変更した方がいいかもね。」
2人は部屋に戻るなり直ぐにチェックアウトをして、ホテルから車を出した。すると、2人の車を追うようにホテルから出てきた黒いセダン型の車があり、雫はバックミラーでその存在を確認すると舌打ちをした。
「恐神さん、ちょっと運転荒くなるからしっかり掴まっててよん!」
「…え?っ!?う、うわあああっ!」
雫は一気に加速し、赤信号ギリギリで左に急旋回し、その後すぐに右の細い路地に入り込むと、スピードを落とすことなく突き進んだ。
「ちょ、ちょっと雫さん!事故りますよ!」
「私はあなたを守る使命があるの!いいから黙って掴まってなさい!」
恐神はグリップを握り締めながら、チラリと後方を向くと、さっきの黒い車がしっかりと追い掛けて来ていた。
「しっつこいわね!」
雫は十字路を右に旋回した。
「し、雫さん!前!前!」
「…チッ。」
曲がった先では道路を封鎖し、路上バルのイベントが行われており、多くの人が路上に置かれたイスやテーブルでワインなどを楽しんでいた。
キキーッ!!「うわあああ!」
恐神は急ブレーキで前の座席に頭をぶつけながらも必死に座席に掴まった。封鎖ゲートギリギリで停車すると、雫は運転席から降りてすぐに後部座席のドアを開けた。
「恐神さん!急いで!」
雫は顔を青くした恐神を引っ張り出すと、何事かと集まりだした群衆を搔き分けながら路上バルの間を駆け抜けた。
すると、後方からバキュンッ!と銃声が鳴り響き、一瞬時間が停止したかのようにその場の全員が固まると、次の瞬間パニックと化し、群衆は散り散りに逃げ惑った。
「今の銃声ですか。」
「とにかく止まらずに走って!」
雫はとある民家に目を付けると恐神の手を引いて民家の敷地に入り、母屋の裏側にある倉庫に目を付け、その中に隠れた。
「ふぅ。」
雫はその場に力尽きるように座り込んだ。
「…はぁ…はぁ…し、雫さん、そろそろ詳しく教えていただきたいんですが。」
恐神が呼吸を整えながら問い掛けると、雫は座ったまま恐神の顔を見上げた。
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