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2人が民家の敷地から道路に出ようと、敷地内の植え込みから顔を覗かせると、カチャッという音がし、振り向くと警官姿の男性が2人に拳銃を向けていた。
「ちょ、ちょっと雫さん!」
「What are you guys doing there?(お前ら、そこで何してんだ?)」
すると、雫は敷地から身を出し、両手を挙げた。
「We were just hiding because some strange men were chasing us.(私たちは変な男たちに追い掛けられて隠れていただけよ。)」
「Asian?(アジア人か?)」
「Yes. Japanese.(そうです、日本人です。)」
「日本人か。」
警官の男性は急に日本語を話し出し、拳銃を静かに下ろした。
「あなた、日本語が話せるの?」
「あぁ、日本に2年間留学してたからな。観光か?」
すると、恐神も敷地から身を出した。
「そうです。観光で来たのですが、急に巻き込まれて。」
「急に拳銃を向けてすまなかった。発砲事件があったということで駆け付けたんだ。僕はサイラス、よろしく。」
握手を求めたサイラスの手を雫が握った。
「神掛雫です。」
「恐神蓮生です。」
恐神が自己紹介しながら手を伸ばすと、サイラスは恐神の顔を見ながら固まった。
「サイラスさん?」
「…恐神。」
サイラスは恐神の顔を睨み付けながら一歩後退した。
「日本人の恐神と言えば、シンジと同じ名だ。何か関係があるのか?」
サイラスの問い掛けに対し、恐神は雫の方をチラリと向いた。
「サ、サイラスさん、そのシンジってのが誰のことだか分からないけど、恐神って苗字は何人もいるのよ!」
「…そうか。」
サイラスは、とりあえず雫の答えに納得し表情を緩めた。
「あの、サイラスさん。そのシンジという人物はこの国では有名な日本人なのですか?」
恐神は何も知らないという体で問い掛けた。
「…あぁ、この辺りでは有名だ。簡単に言えばロンドンを縄張りとしたギャングのボス。独裁的かつ暴力的で、僕たち警察も苦労してるんだ。」
「…ギャングのボス。しかし、何故日本人がそんな位の人物に?」
「シンジをはじめとした数人の日本人が、日本からこの国に逃げて来たと聞いている。シンジは元々崇高な科学者だという噂も聞いたことがある。」
「…科学者。雫さん…。」
恐神は雫に振り向いた。雫は詳細は知らないと首を横に振った。
「…ちなみにサイラスさんは、そのシンジをトップとしたギャングの居場所はご存知なのですか?」
「…何故そんなことを聞くんだ?」
サイラスの目つきが再び鋭くなった。
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