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「お、恐神さんは多分興味本位なだけよ。同じ苗字で、イギリス人のあなたに有名な人物なんて言われたから!」
雫は咄嗟に理由になっていない理由でフォローをした。
「…ふん。居場所なら勿論知っているさ。」
サイラスの答えに恐神はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「でも、まだ野放しということはこの国の警察も大したことないんですね。」
「なっ!!」
「お、恐神さん!?」
ムッとしたサイラスを見て、雫が慌てた様子を見せた。雫と目が合った恐神が、軽くウインクをして合図を送ると、雫は恐神の言動を理解し、サイラスに振り向いた。
「確かに!恐神さんの言うことも一理ありますね!」
「な、何だと?」
サイラスは雫を睨み付けた。
「でも、恐神さん。やっぱ警察が捕まえられないとなると、そのシンジという人は恐ろしく強い人なんだろうね!」
「えぇ。警察よりも頭が切れるのでしょう。」
2人が小馬鹿にするように話をすると、サイラスは恐神たちを睨み付けたながら顔を近づけた。
「別に奴が怖いわけじゃない!僕たちが奴を逮捕できないのは、政治的な話だ!」
「…政治的ねぇ。」
「な、何だよ、その目は。いいだろう!なら、今からそのシンジがいるアジトまで連れてってやる!」
サイラスはイライラしながら車に向かって歩き出した。
「一応煽り作戦は成功しましたが、雫さん、車はどうしますか?」
「あの車はもう奴らに把握されちゃったから使わない方がいいわ!とりあえずサイラスの車で向かいましょ!」
2人はサイラスを追い掛けた。
車に乗り込んでから、20分ほど走るとサイラスは車を停車させた。
「…そこの角を曲がった先にある大きな家が奴らのアジトだ。」
「何よ。私たちだけで見てこいってこと?」
雫の問い掛けにサイラスは舌打ちをした。
「雫さん、彼も組織の人間です。事情は理解しましょう。サイラスさん、ありがとうございました。」
恐神はそう言うと、後部座席のドアを開けた。
「ちょっと待て。」
サイラスの言葉に、降車しようとした恐神は動きを止めた。
「君らの目的は本当に観光だったのか?」
「…えぇ、勿論です。この辺りで有名なギャングのアジトを見るのも、観光の1つです。」
恐神は微笑みながらそう言うと降車し、続けて雫も降車した。
「ここで待ってる。すぐに戻ってこいよ。」
2人は角を曲がると、数十メートル先にある大きな家を見つめた。
「…あそこに恐神さんの父親がいるのか。」
すると、雫のスマホが震え出し、画面を見た雫は電話に出た。
「もしもし、ミリアお姉ちゃん?」
"ちょっと、あんたのスマホの位置情報見たらめっちゃ危険なとこにいるじゃん!駄目よ、戻りなさい!"
「だって、どうせ恐神さんはあそこにいる父親に会いに来たんでしょ?アポ取れないならこっちから行ったほうが早いじゃん!」
"違うのよ。更に得た新しい情報だと恐神神治はギャングのボスじゃなくて…"
「ごめん、お姉ちゃん電話切るわ。」
雫は急いでスマホをポケットに仕舞った。例の家の敷地から1人の男が出てきて、真っ直ぐ2人の方に向かって歩いてきたのだ。男は2人を睨み付けたおり、恐神は雫を自分の後ろに移動させた。
「雫さん、ここは私が。」
男は睨み付けたまま、2人の前で足を止めた。
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