20人が本棚に入れています
本棚に追加
*
お弁当を食べ終え、昼間のまどろみにうつらうつらしていた私。
ランチから戻ってきた女子社員たちの声で覚醒。
「えーなにこれぇ」
「これ誰が買ってきたの?」
「ふぁ……ふぁいブレイン……てなに?」
その声に私は、PCの前で仰け反りそうになる。
は?え? 今なんと? Φブレインですって?
カフェスペースにたむろする女子社員たちの声の方へと耳をそば立てた。
「アニメか何かなの?知らなーい。中身はウェハースみたいだけど……シール付きだってさ」
は?え? まさか推しのファイブレチョコ?
「こんなの誰が買ってきたのよ? 要らなーい」
要るわ!
欲しいし、ください!
そば立てていた耳を戻して、落ち着けーと言いながら、ふうーと細く息を整える。
私が推している5人ボーイズグループ『Φブレイン』、略してファイブレは、あるオーディション番組から誕生した、この世で一番カッコよくて尊いダンスグループだ。
その中で、神ダンスのレンジくん推しの私は今、ライブに行くのはもちろんのこと、レンジくんのグッズなどを買い漁っている。
もちろんシール付きチョコ菓子もしかり。
どうしよう。そのウェハース、むちゃくちゃ欲しい。すでに何枚か持ってはいるが、できたら鑑賞用がもう一枚欲しい。
私は、女子社員が立ち去ったのを確認してから、カフェスペースへ、そろりそろりと忍び足で近づいた。
まあ私が何をやってようが、私の存在なんか、無色透明人間だし、誰も気にかけてないとは思うけどね。
山盛りになっているお菓子BOXに視線を向ける。
(まじか、本当にある)
誰が置いたかわからないけど、確かにファイブレのチョコレート菓子がみっつも。キャラデザされたメンバーのイラスト。
きゃ……きゃわいい。
私はそろりと手を伸ばし、さささと3袋をGET。
手と手で挟んでなるべく人の目につかないように移動。手の温もりでチョコが溶け、ウェハースはバリバリに死んでいるかもしれないが、私の狙いは中のキャラシールのみ。
内心バクバクしながら、自席に着いた。
(嘘でしょ。市内中のスーパーをかけずり回ってようやく8個をGETしたのだというのに、なんの苦労もなく3個も……なんて日だ!!)
最初のコメントを投稿しよう!